猛暑の夏は終わりを迎えつつあるが、コロナ禍はまだ完全終息の気配がない。マスク必須の暮らしを強いられ、気を張り続けている私たちの心は確実に疲れているはずだ。

 そんな状況が影響してか、前回、NPO法人日本ヘルスツーリズム振興機構・業務執行担当理事の髙橋伸佳さんから伺ったお話のなかでもっとも気になったのは、メンタルの癒やしに特化し、髙橋さんが思わず泣いてしまったという沖縄の「逃げ旅」。心理学や哲学などをふまえてスピリチュアルにアプローチするプログラムの根幹を成す、「聖地巡りリトリート」を体験してみた。

聖なる地で自分と向き合う

 舞台は、沖縄県の本島南部に位置する南城市。主催者であるイーストホームタウン沖縄・代表取締役の相澤和人さんとともにまず向かったのは、琉球の神話で国づくりをした女神アマミキヨが、沖縄本島で最初に降り立った場所だとされる「ヤハラヅカサ」の浜だ。生い茂るガジュマルが景色を覆う道を進むと、ぽっかり空いた木々のトンネルの向こうに南国の海が広がっていた。

潮の満ち引きで刻々と景色が変わるヤハラヅカサ。訪れた際は、引き潮。いつまでも歩いていたい気分にかられた(写真:松隈 直樹、以下同)

 最初のアクティビティはその海岸を、呼吸を意識しながらを歩くこと。

 「なにか考えながらでもいいし、なにも考えなくてもいい。時間も気にせずに」

 そんな相澤さんの言葉を受け、水平線の先まで遮るものがない景色のなか、裸足になってひとり歩きだす。日差しで温んだ海水は体温と馴染み、あたりの静寂のせいか、足を踏み出すたびにぴちゃっ、ぴちゃっという音が際だって耳に響く。

 「気持ちいい~!」

 なんら深い思考に至ることもなく、ただただそう思いながら歩き続けた。

 その後は岩の陰に陣取り、10分間の瞑想。「いい思い出を振り返って」と言われて図らずも心が飛んだのは、家族揃って出かけた故郷・青森の海岸だった。すっかり忘れていた、遠い記憶。さらには懐かしい思い出が次から次へと胸をよぎり、いつしか涙が頬を伝っていた。同時に、すっと心が軽くなる不思議な感覚を得る。まるで涙とともに、目には見えないもやもやが流されたかのようだった。