コロナ禍により、我々のライフスタイルには大きな変化が生じた。その一つが、家庭での食事が増えたこと。加えて健康への意識が高まる中、改めて注目されているのが発酵食だ。世の中が、発酵食の存在をないがしろにしていた早い時期から商品開発や発信を重ねてきた石川県金沢市の「ヤマト醤油味噌」で、その取り組みと現在のマーケットの変化、進化を伺った。

発酵食への扉を大きく開く糀パーク

 明治44年(1911年)創業のヤマト醬油味噌があるのは、金沢駅から車で約15分、金沢港に面した大野地区。一帯の歴史は、大野荘と呼ばれた京都の寺の荘園だった1300年ほど前まで遡る。海に面した立地と豊富な湧き水が幸いし、江戸時代には醤油産業が盛んに。千葉の野田、銚子、兵庫の龍野、香川の小豆島と並ぶ五大醤油産地とされた。

 その伝統を受け継いだヤマト醬油味噌では、昔ながらの手法で醤油や味噌を仕込むだけではなく、塩糀、いしる(イカの魚醤)といった発酵調味料から甘酒、各種スイーツまで商品を広く展開。2015年、北陸新幹線の東京~金沢間開業に合わせて敷地内に誕生した「糀パーク」には、ショップや展示施設、食堂などが設けられ、車で出向く郊外に位置することもあってコロナ禍以降でも客足はさほど衰えていないという。

 その糀パークで人気を博しているのが、「糀蔵ガイド付きツアー」。歳月を経た蔵の建物や醤油、味噌を仕込む過程の案内に加え、製造を支える糀菌の働き、すなわち発酵に関するあれこれが絵図とともに分かりやすく丁寧に説明されるのが大きな特徴だ。甘酒を溶かした「糀手湯」に手をつけて肌の変化を実感したり、熟成期間が異なる味噌の香りをかいだりと、発酵の効果や面白さを体感するひとときもある。

ヤマト醬油味噌代表取締役社長の山本晴一氏は、埼玉大学経済学部卒。在学中にはオレゴン大学に留学。地元の日本酒蔵勤務後に家業を継いだ。工場長で弟の晋平氏は、東洋紡の研究者を経て、金沢大学の自然科学研究科物質科学コースでの甘酒研究論文で博士号を取得した日本で唯一の「甘酒博士」。マーケティングと確かな研究開発という兄弟の連携による多彩な取り組みは、蔵のウェブサイトでご確認を(写真:松隈 直樹、以下注記のないものは同)<br><a href="https://www.yamato-soysauce-miso.co.jp/" target="_blank">https://www.yamato-soysauce-miso.co.jp/</a>
ヤマト醬油味噌代表取締役社長の山本晴一氏は、埼玉大学経済学部卒。在学中にはオレゴン大学に留学。地元の日本酒蔵勤務後に家業を継いだ。工場長で弟の晋平氏は、東洋紡の研究者を経て、金沢大学の自然科学研究科物質科学コースでの甘酒研究論文で博士号を取得した日本で唯一の「甘酒博士」。マーケティングと確かな研究開発という兄弟の連携による多彩な取り組みは、蔵のウェブサイトでご確認を(写真:松隈 直樹、以下注記のないものは同)
https://www.yamato-soysauce-miso.co.jp/
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 パーク内の「発酵食美人食堂」は、文字通り発酵食に特化したメニューぞろい。すべてに自社の発酵調味料が使われており、おいしいのはもちろん、塩味、甘味、旨味、さらには余韻まで実にやわらかな印象をもたらすのが面白い。料理には使用した調味料の説明が添えられ、食堂の一角には現物が並ぶため、興味を促されてショップへという流れも構築できている。

 「発酵食の文化を通し、お客さまの健康で喜びに満ちた食生活の実現を目指すのが、我々の目指すところ。日々の暮らしに少しでも発酵食を取り入れて欲しいとの思いから、糀パークの楽しみ方は一歩一歩、発酵食へと続く階段をのぼれるように設計しました」と話すのは、代表取締役社長の山本晴一氏だ。