ヘルスツーリズムの目的は単なる「健康」ではない

 ヘルスツーリズムという視点で眺めれば、沖縄は確かに魅力にあふれるが、ここで基本に立ち返ると、実はヘルスツーリズムという呼称は日本独自のものだと荒川教授は話す。海外の認識ではヘルスはメディカルに近い意味があり、ツーリーズムにおいてはウェルネスという言葉が広く使われているそうだ。

 「ウェルネスとは、より良く生きるライフスタイルのあり方。海外においては、ウェルネスツーリズムと呼ばれるスパツーリズムが主流です。スパ施設を備えたラグジュアリー施設に滞在し、ゆっくり保養する。一方で、地域ならではの資源を有効に活用して健康への行動変容を促す、日本のヘルスツーリズムは独自のもの。ですからインバウンドの観光客に発信できるポテンシャルがあるはずですし、たとえば『日本型ヘルスツーリズム』と名付け、そのプログラムやスキームを輸出することもできるでしょう」

沖縄各地には小さな祠が見られ、地元に人々が日々の暮らしのなかで手を合わせる(写真:松隈 直樹、以下同)

 とはいえ、ヘルスツーリズムの目的は単に体が健やかになることや長寿ではなく、ウェルネスを組み込んでいかなければ、ビジネスとして成長しないとも。

 「生きがいのある豊かな人生を歩んでこそ、健康。また、たとえば単に歩くことが体にいいと打ち出しだけでは、多くの人の心には響きません。それが美容や格好良さにつながるというような、ライフスタイルやファッションセンスに訴え、強いインパクトを与える高度なアプローチをしないと確実な行動変容にはつながらない。さらには、健康にとらわれているうちはその関連企業しか巻き込めませんが、ウェルネスをテーマにすれば幅広い産業と手を組める。ヘルスからウェルネスへ。このサイトの名称ではありませんが、まさしく『Beyond Health(ビヨンドヘルス)』、健康のその先への意識がこれから大事なんです」