文化と言語の壁は国によりさまざま

 一口に外国人家政婦と言っても、もちろん出身国による違いは大きい。アクティブ・グローバル社では、開業当初にはインド人、スリランカ人の家政婦が多かったが、その後フィリピン政府から承認されてから、フィリピン人がほとんどになったという。

 「事業を始めてみて、いかに文化の違いを克服するのが大切かを実体験した。インドには優秀な人材が多いものの、宗教的な戒律が複雑なのと、香港と文化的な違いが大きいことがネックになった。例えば、肉を食べるだけでなく、目にすることも戒律で許されない人もいる。その場合、ベジタリアン家庭で勤務するなら問題になりづらいものの、そうできるとは限らない。香港では家政婦ビザの取得に3カ月以上かかることもあるので、一度マッチングで失敗すると半年近くがムダになる。その点、フィリピンは過去30年以上にわたって香港に家政婦を派遣してきた歴史があるため、深い文化的相互理解が築かれていて、スムーズに進みやすかった」

アクティブ・グローバル社が招聘したインド出身の介護士の仕事風景(写真:アクティブ・グローバル社提供)
アクティブ・グローバル社が招聘したインド出身の介護士の仕事風景(写真:アクティブ・グローバル社提供)
南国出身のスタッフは明るい人柄の人が多い。フィリピン人の介護士の仕事風景(写真:アクティブ・グローバル社提供)
南国出身のスタッフは明るい人柄の人が多い。フィリピン人の介護士の仕事風景(写真:アクティブ・グローバル社提供)
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 香港では一般的に、フィリピン人の外国人家政婦は、英語が堪能でエネルギッシュな人が多いと見られている。大卒も珍しくない高学歴の傾向もあるため、子供の遊びや宿題を見ながら、英語を日常的に使う環境を作ることができると、子育て中の家庭からの需要が高い。一方、インドネシア人の家政婦は、広東語が堪能でおっとりとした気性のため、高齢者がいる家庭から人気が高い。そんな印象が強かったので、アクティブ・グローバル社にはインドネシア人の人材はいないと聞いて不思議に感じ、その理由をチュウ氏に尋ねてみた。

 「高学歴の医療系人材を含めた出稼ぎ者を世界中に送り続けているフィリピンと違って、インドネシアでは、看護師や介護士の資格を持つ人材は、そもそも海外に出稼ぎに行く必要がない。加えて、一般的に出稼ぎ労働に対して『社会的地位が低い人の仕事』という通念があるため、当社の仕組みとはマッチしなかった」とチュウ氏。やはり、呼ぶ側と送り出す側の需要と供給が一致してこそ成立するサービスであることがうかがわれる。

 受け入れ側の違いはどうなのか。日本であれば高齢者であればあるほど、言語の壁が大きいので、いきなり高齢者の自宅介護を外国人に頼むのは難しいと感じるが、他のアジア圏ではそれぞれ状況が異なる。

 シンガポール、香港、上海で事業展開しているアクティブ・グローバル社では、元々外国人家政婦文化があって高齢者でも英語力が高い人が多い香港やシンガポールでは、この「外国人家政婦制度を応用した住み込みの看護師/介護士資格者雇用」という仕組みを導入しやすかったという。

 一方、日本と同様に高齢者が外国の言語や文化に慣れていない上海では、「自宅介護ではなく、政府との提携で、時給制による介護サービスセンターの運営を任されている」とチュウ氏。

 手の届く金銭的負担で充実した自宅介護が望めるアクティブ・グローバル社のような仕組みが日本にもあればと思うものの、日本で実現できるとすれば、香港やシンガポール型でなく、外部のサービスとして部分的な介護サポートを提供する上海型が現実的なのかもしれない。

 移民による労働力提供については、日本だけでなく世界中でメリットとデメリットに関する議論が絶えないが、超高齢社会の日本で、今回紹介したようなサービスが利用できれば、幸福度が増す家庭が多いのではないかと考えさせられる。「文化の壁が厚い」といわれる日本側の受け入れ体制が今後整って行くことを期待する。

(タイトル部のImage:筆者が撮影)