豚肉をターゲットにしたのは自明の理だった

 今や大成功を遂げている「オムニポーク」は、デイビッド・ヤン氏自身が直面した悩みから生まれた。ニューヨーク在住だった2000年頃からベジタリアンになったというヤン氏は、「2003年に香港に戻ったとき、日々の生活が非常に困難になった」と振り返る。

冷凍で販売されている「オムニポーク」38香港ドル(230g)。ホルモン剤不使用、抗生物質不使用、ビーガン、遺伝子組み換え食材不使用、動物実験なし、ニンニクとタマネギ不使用(精進料理に使用可)
冷凍で販売されている「オムニポーク」38香港ドル(230g)。ホルモン剤不使用、抗生物質不使用、ビーガン、遺伝子組み換え食材不使用、動物実験なし、ニンニクとタマネギ不使用(精進料理に使用可)
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 「香港で友人と食事に行っても、肉や魚以外のメインディッシュはほとんどない。香港人は肉が好きだし、温かい食べ物を好むからサラダも受け付けなくて、選択肢がとても限られていた。100%ベジタリアンやヴィーガンになるというのは、香港人にはハードルが高すぎるから、着地点を『フレキシタリアン』として『グリーン・マンデー』を奨励するとともに、ブリッジとなるプラントベースの代替肉があれば、肉の消費量を減らしつつ、社会に影響を与えることができると考えた」

 プラントベース肉の先駆者としてアメリカで開発された「インポッシブル・ミート」や「ビヨンド・ミート」は、共に牛肉の代替肉。「アジアで最も食されているのは豚肉。例えば世界で豚肉消費は肉全体の40%だが、中国では65%にも及ぶほど。香港を中心にしたアジアの食に影響を与えるなら、豚肉をターゲットにするべきだというのは自明の理だった」とヤン氏。

アメリカ発の代替肉先駆者である「ビヨンド・ミート」の製品もグリーン・コモンで販売中。ハンバーガーのパテ(2枚入り79香港ドル)やソーセージ(4本入り89.9香港ドル)
アメリカ発の代替肉先駆者である「ビヨンド・ミート」の製品もグリーン・コモンで販売中。ハンバーガーのパテ(2枚入り79香港ドル)やソーセージ(4本入り89.9香港ドル)
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 構想段階を経て、ヤン氏は2014年から、数十年間にわたる開発経験を持つカナダ・バンクーバーの食品化学研究機関との共同作業で、豚肉代替肉の研究開発を進めた。

 この開発期間にこだわったポイントが2つある。第1は「調理する際に、特別な処理や工程を加える必要がなく、豚肉とまったく同じに扱えること」。つまり炒める、蒸す、揚げる、詰め物にする、ミートボールにするなど、あらゆる調理法を使っても、豚肉としての味、食感、香りなどの特徴が保たれること。

2020年1月発売開始された新製品は、忙しい人に人気を呼びそうなタイ料理の調理済みタイプ。共に39.9香港ドル
2020年1月発売開始された新製品は、忙しい人に人気を呼びそうなタイ料理の調理済みタイプ。共に39.9香港ドル
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 第2は、「豚肉よりも健康的であること」。「オムニポーク」と豚肉を比べると、コレステロール値0、カロリー66%減、飽和脂肪酸86%減、カルシウム260%増、鉄分127%増、さらに豚肉には含まれない食物繊維も100g中4.5gという圧倒的な差が生まれている。

 そしてこれらの品質を維持したまま大量生産できる体制を構築。詳細な原料や構成は公開していないが、主な原料として、非遺伝子組み換え大豆、シイタケ、米、サトウキビなどを使用し、工場はタイにあるという。

 完成度の高さが認められ、香港では高級広東料理店を中心に使用レストランが急増中。さらにタイ、台湾、シンガポール、ベトナムなどでも使われ始めており、2020年は日本でも使用が始まる予定だ。