オミクロン株感染流行によるコロナ第五波で、1日の感染者数が5万人を超えている香港(2022年3月6日現在)。他国よりはそれでも少ない数字ながら、政府はゼロコロナ政策を継続しているため、間もなくロックダウンも噂されている。

この状況下で高齢者の外出は減っているものの、通常の香港であればさまざまな歩行器を使い、他国であれば自力で歩くことは考えられないであろう状態の高齢者が、一歩一歩、どんなにゆっくりでも自分の足で歩むことへのこだわりを捨てないでいる姿をあちこちで目にする。これこそ最長寿の秘密なのだろうと感動させられる。

そんな香港で、高齢者の健康的で独立した生活のパートナーを目指して開発された、BNET社のBluetooth経由スマホアプリ連動のスマート歩行補助杖「STICKu」を今回は紹介しよう。

「杖は弱者の象徴」ではない

 BNET社創業者のリチャード・レン氏が、STICKu開発を思い立ったきっかけは、当時40歳代だった今は亡き姉の子宮頸がんだった。「がんの痛みで歩行がしづらくなった姉のために、さまざまな杖を探して渡したけれど、『弱者と見られたくない』と感じる姉は、結局どの杖も使用しなかった。見た目も中身も、そんな使用者の気持ちに寄り添いながら、転倒リスクを避けられる杖を作りたいという強い意思が生まれた」

素材はアルミニウム合金、ナイロングラスファイバー使用。重さは最大550g。使用者の身長に合わせて8段階の長さ調節が可能(写真:筆者が撮影)
素材はアルミニウム合金、ナイロングラスファイバー使用。重さは最大550g。使用者の身長に合わせて8段階の長さ調節が可能(写真:筆者が撮影)
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 当時勤務していたおもちゃ会社を退職し、リチャード氏の計画に共鳴した、高校の同級生で金融業界にいたブライアン・ラム氏と共に2017年にBNET社を起業。2年かけてSTICKuを完成させ、2020年6月の父の日に発売開始した。

 「使用者の意見や要望を汲み取るために、60~80歳代の男女100人以上からヒアリングした。杖を使っている人、使っていない人、両方に意見を聞いている」とリチャード氏。主に公園で話しかけるなどして、地道に意見を集めたという。

 そんな思いが詰まったSTICKuの主な機能と仕様は次の通りだ。