本コラムは、世界最長寿を突き進む香港の“ヘルスケア”事情を、現地在住13年の筆者に深堀りしてもらう連載ですが、番外編として筆者が見た香港における「新型コロナウイルス」対応の様子を数回に渡りお伝えしています。(Beyond Health編集部)
――前回の記事はこちら――

 世界中で刻一刻と変わっている新型コロナウイルスの感染状況。前回の記事執筆時点では収束に近く見えた香港の状況も、その後の欧米での感染拡大の影響を受けて一変。国際都市である香港では、欧米との距離感は日本よりもずっと近く、移住、就職や大学留学はもちろん、中高校生から海外の寄宿舎学校に子どもを留学させるケースも珍しくない。3月半ばから香港への帰国ラッシュが始まると、主にヨーロッパからの帰国者・入国者が感染源となり、再び感染者が急増するという新しい局面に突入した。

 3月18日には、台湾とマカオを除く全世界からの入国者は14日の隔離が必要になり、3月25日以降、香港居住者以外の入国は一部の例外を除き禁止されている。実は筆者の長男も、3月22日に英国の留学先から香港に帰国。香港での隔離は、日本のような「要請」ではなく「強制」なのにもかかわらず、無視して外出するケースが相次ぎ感染拡大の原因となったため、違反時の厳罰化と運用の効率化が迅速に進んだ。

 今回は、筆者自身の家族が自宅隔離をした体験をベースに、香港の行政がどのように隔離を進め管理しているかをレポートしたい。

感染者情報の公開を徹底する香港

 英国で最も感染者が多いロンドン中心部に暮らしていた長男を迎えるにあたり、心配なのは家族への感染。観光客や出張客が不在のため稼働率が一桁台となり大苦戦するホテル業界からも、3月19日時点で14軒のホテルが隔離用に1000室以上の提供を申し出ており、価格は平常時の1/4程度に下げている。家族によっては、隔離対象者の子どもを自宅に入れ、父親がホテルから出勤というケースも耳にした。

長男が香港到着時に受け取った書類の一部。香港特別行政区衛生署による「強制検疫令」の説明、アプリの使用方法、隔離生活中の注意事項や快適に過ごすためのアドバイスを細かく記載した冊子などが含まれていた(写真:筆者が撮影)

 インターネットで「安全な隔離のコツ」を調べた結果、3寝室以上のマンションにはよくある「主寝室に専用のトイレ付き浴室、他にもう一つトイレ付き浴室」という間取りの我が家なら、隔離者と残りの家族を分離しやすいため、工夫次第で自宅隔離も安全と判断した。

 当初、長男が搭乗予定だったバンコク乗り継ぎ便に、「搭乗72時間以内に受けた検査によるコロナ陰性証明書を持たない外国人は搭乗不可」という、つまりは搭乗できないことを意味する条件が突然加わったため、急遽直行便に変更して帰国日が予定より1日早まるなど不測の事態もあり、とにかくバタバタと大がかりな模様替えを行った。

 隔離期間中は主寝室にあるものを持ち出せないと考えると、まるで自分の家の中で2週間の旅行に行く気分で、服や洗面道具などを他の部屋に運んだ。

香港での徹底的な情報公開は心強い。”Coronavirus Disease (COVID-19) in HK” ウェブサイトhttps://chp-dashboard.geodata.gov.hk/covid-19/en.htmlのトップ画面には、現在の感染者数(赤)、退院者数(緑)、入院者数(黄)、死者数(灰)の他、香港全図に過去14日間に感染者数が出た建物(赤丸)、過去14日以前に出た建物(緑丸)が表示され、1つずつのケースの詳細が確認できる(出所:同ウェブサイト、以下同)
感染者を選び、拡大すると、ここまで詳細な住所と年齢、性別、入院先などが分かる。海外からの帰国者の場合は「Imported」とフラグが立てられる
香港への到着便から感染者が出た場合は座席番号まで表示される。長男が搭乗した便では2人感染者が出ていた。座席番号は長男より10列後ろだったが、「これはまるでロシアンルーレットだね」と戦々恐々としたことが記憶に新しい