「香港、世界最長寿の秘密」をテーマに、これまで香港の医療や社会体制、コロナ禍での状況などの話題を取り上げてきた。連載20回を迎えて、編集部より、さらに幅広い香港のヘルスケア情報を知りたいという声をいただいた。そこで今回は、私が継続してチェックしている化粧品、香港のスキンケア事情について紹介したい。既存ブランドとは大きく異なる発想でスキンケア製品を開発する、注目の香港ブランドを取材した。

アジアの肌に最適な製品を

 化粧品の供給は、フランス、米国、韓国、日本などからの輸入が約95%(2021年予測)を占める香港で、地元発のブランド「SKIN NEED」が存在感を高めつつある。日々の肌の状態とニーズをユーザーが自ら判断してブレンドする「プライベートフォーミュラ」をコンセプトとする高機能スキンケアは、成り立ちからフォーミュラ(配合)、ラインナップまで、斬新な発想に基づいている。

 「長年スキンケアを欧米からの輸入品に頼って来た香港では、クリーミー、オイリーでリッチを最上とするスキンケアの信条までも欧米流を取り入れていた。しかし欧米と気候が全く異なる高温多湿な香港を含めた東南アジアに適しているのは、すっと軽くて肌に浸透するウォーターベースのスキンケア。そんなアジアの肌に最適な製品を開発したいと考えていた」と語る、SKIN NEED創業者のクリスタル・レン氏。そのコンセプトには、彼女本人の背景と経験が色濃く反映されている。

SKIN NEED創業者のクリスタル・レン氏は現在36歳(写真提供:SKIN NEED)。現在はスパ経営から退き、化粧品事業一本に。スパ向けPB商品開発の請負は事業の柱の1つ。SKIN NEEDのHP=<a href="https://skinneed.com/">https://skinneed.com/</a>
SKIN NEED創業者のクリスタル・レン氏は現在36歳(写真提供:SKIN NEED)。現在はスパ経営から退き、化粧品事業一本に。スパ向けPB商品開発の請負は事業の柱の1つ。SKIN NEEDのHP=https://skinneed.com/
[画像のクリックで別ページへ]

 母親が経営するスパの後継者になることを期待されていたレン氏は、12歳から週末や休暇中になるとスパの手伝いをしながら、母親の施術や接客を目にしていた。

 「香港のスパでは、初回に肌分析を行ってから、リフトアップ10回分などの回数券を販売し、毎回同じ施術を繰り返すのが一般的。しかし母は異色の方針を貫いていた」

 寝不足、ストレス、日焼けなど生活の中での変化、月経などによるホルモンバランスの乱れ、季節の変わり目などにも影響される顧客の肌状態は、常に変動している。「母の場合は、毎回肌診断とコンサルテーションを行って、来店時のニーズに合った製品を選び施術を行っていた。これこそがスキンケアのあるべき姿だと子供心に感銘を受け、SKIN NEEDのコンセプトが生まれるきっかけになった」

 レン氏の興味は「母が私に望んでいた、スパ経営やマッサージなどセラピストとしての技術ではなくて、“使用する製品そのもの”に向かった。肌を向上させる製品をつくるには、肌の細胞の仕組みやシステム、ケア製品の成分が肌に与える作用などを全て理解しなければと感じ、自分が知りたい答えは生化学にあると気づいた」

 米国UCLAで生化学を専攻し、インターンとしてロレアルなどのトップブランドの研究所で配合や製造を実地で学んだレン氏は、香港に帰港後、母親のスパの経営を引き継ぎながら、SKIN NEEDの製品開発を続けていた。