レストランで体を冷やさないように白湯が出てきたり、オフィスの近くで昼休みに漢方成分がたっぷり入った「涼茶」を若い男性が飲んでいたり、香港では日常のちょっとしたところで、TCM(Traditional Chinese Medicine:中医学、香港での漢方を示す略称)が、生活に根ざしていることを感じさせられる。

とはいえ、そんな香港でも「TCMに対して魔術的、神秘的なイメージを抱く人が多い。実際には大変論理的で体系的なものであり、TCMの知識を深めることで、健康と生活の質をぐっと向上できる」と、モダンなセンスでアレンジしながら啓発を続けているのが、漢方医のシンシ・ランさん。

彼女が2016年に創業したTCMをベースにしたライフスタイルショップが、「チェックチェックシン」。香港には似たコンセプトのブランドは存在する中、筆者が長年香港で見てきた中で、センスの良さ、質の高さ、アイデアの豊かさが群を抜いている。今回はこの「チェックチェックシン」をじっくり紹介しよう。

「チェックチェックシン」創業者で漢方医のシンシ・ランさん(写真:筆者が撮影、以下同)

マーケティング職から漢方医、そして起業家へ

 かつて広告代理店でマーケティングを専門に活躍していたシンシさん。母や叔父がTCM治療を受けるところに付き添っているうちに、その奥深さに興味を抱くように。

 「例えば足が痛いという症状で、原因が腎臓にあったりするなど、西洋医学や物理治療では捉えきれないところまで分かるところに感銘を受けた」と語るシンシさん。やがて会社を辞めて2007年に香港大学中医学部に入学。上海の病院での実習1年を含めた5年間の履修を経て医師免許を取得し、2012年に診療所を開業。

 同時にフェイスブックでTCMの基礎知識を親しみやすく伝えるページを作ったり、体にいい広東スープのレシピ本を3冊出版したり、積極的に情報発信をしていた。

シンシさんが出版した広東スープ本シリーズと、人気商品の一つとなっているレトルトの広東スープ

 診療やSNSでの反応の中で、シンシさんが気になったのが「体質や体調に合わないものをよかれと思って食べて、さらに体調を崩す人が多いこと。例えば喉が痛い人は、熱を含んだビーフ、チキン、カボチャなどを食べずに、スイカや冬瓜などを食べるといい。正しい知識を持って毎日の食事に気をつけていれば、体調も改善でき、病気を防げるし、医者に行く必要がなくなる」