コロナの出現で大きく方向転換

 この日は、サイバーパークのオフィスで、マク氏とプーン教授に話をうかがった。

 「マークの天才的な閃きを生かした高度な製品を作りつつ、収益をきちんと得てそれを研究開発に回すというサイクルをしっかり構築するのが私の役目。昨年、5Gロボティックス分野で認知されて自信を蓄えたことも、才能豊かな若き技術者にとって重要な過程だった」とプーン教授。

 最先端技術追求する第一の柱に属する代表製品が「ME」なら、市場の要求に応える第二の柱となるのが、コロナ禍に対応した製品の数々。

 Robornでは建設現場や教育現場を主なターゲット市場と想定していたものの、2020年に入ってからのコロナウィルスの出現で大きく方向転換することになった。

サイバーポート内を自在に動き回るPEP-3000と、機電工程署での導入時(写真:Roborn提供)
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サイバーポート内を自在に動き回るPEP-3000と、機電工程署での導入時(写真:Roborn提供)
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サイバーポート内を自在に動き回るPEP-3000と、機電工程署での導入時(写真:Roborn提供)

 「今年1月23日に香港でコロナ初感染者が出た日、プーン教授から電話が来て、『非常に危うい状況のようだ。Robornならではのロボットを作って、政府の感染対策に協力しよう』と話し合った。その後不眠不休で、ロボット開発のみならず、プルーフ・オブ・コンセプト(概念実証)まで15日間で完成させたのが、完全自走の体温計測ロボットPEP-3000」とマク氏。

 短期間で作り上げた体温計測という点は前回のInsight Technologies社と同じだが、香港でのコロナ発症のニュースに合わせて、それぞれの得意分野や既存技術、企業哲学により、完成した製品の個性が全く異なるところが面白い。

PEP-3000の管理画面。筆者がマスクをしている、体温が平温であることが表示されている。完全自走ができるが、オペレーターが遠隔操作するアバターモードも選べる
PEP-3000の管理画面。筆者がマスクをしている、体温が平温であることが表示されている。完全自走ができるが、オペレーターが遠隔操作するアバターモードも選べる
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 障害物を避けながら動く監視ロボットPEP-3000の自慢は、アジリティ(敏捷性)。

 「朝は入口の近くで出勤者の体温チェック。その後、館内を動いて昼は食堂へ移動するなど、ロボットがスケジュールを把握して動く。熱い飲み物を持っている場合などの誤作動を防ぐために、人体を認識して額周辺のみを計測するように調節している。導入先のニーズに合わせて機能を取捨選択してインストールされているが、フル機能版では、顔認識に紐付けた個人の健康情報と比較して、平熱よりどれだけ高いかを比較したり、ロボットが移動中に撮影した写真とビデオを管理オフィスに送信したり。高熱者の館内での動きを把握してアラームを鳴らし警備員を派遣することも可能になっている」

PEP-3000の他にも、老人ホームや保育園などで、館内で倒れた人を係員に知らせるAIシステム(左)など、「観察+サービス」を行うロボットにより、人材不足を補いつつ利用者の安全性を高める製品を次々と開発している。右は交通管理のためにリアルタイムでバス停に並ぶ人数を数えるシステム
PEP-3000の他にも、老人ホームや保育園などで、館内で倒れた人を係員に知らせるAIシステム(左)など、「観察+サービス」を行うロボットにより、人材不足を補いつつ利用者の安全性を高める製品を次々と開発している。右は交通管理のためにリアルタイムでバス停に並ぶ人数を数えるシステム
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 PEP-3000は、香港の科学技術省である「機電工程署」に複数台の他、国土交通省に当たる「運輸署」の運転免許事務所など、複数の政府機関省庁に導入されている。参考価格は1台580万円前後とのこと。