すべてバーチャル、何の事前登録も必要なし

 実際にこの医療券をどのように使うのか、譚さんに見せていただいた。まず驚いたのが、頭で想像していた「高齢者の自宅に印刷した券やカードが郵送されてくる」というものでもなく、すべて対象者の香港IDにひも付けされていて、すべてバーチャル、そして何の事前登録も必要ではないこと。

問診の結果から、処方箋を書く林先生と譚金愛さん

 「これから診療に行くけれども、カードが見つからない」「医療券というのがあるらしいけれども、登録の仕方が良く分からない/億劫だから使っていない」などという、とてもありそうな事態が起きないようによく考えられている。

 医療券の使用や残高確認には「e Health System」というオンラインプラットフォームが使用されている。これには使用者の登録が必要だが、未登録のままクリニックに行っても、そこのスタッフが代わりに登録してくれる仕組になっているので、高齢者はとにかく自分の香港IDさえ持っていれば良い。

医療券を使っての受診の場合、必ず患者にコンセントフォームが提示され、署名をすることになっている
ICカードリーダーに患者の香港IDを挿入して(写真左下)、eHealth Systemにアクセスする仕組み

 医療券の残高確認は、専用電話か、このe Health SystemのモバイルアプリかPCサイトで確認できるし、親族が代わりに確認することも可能になっている。

 試行段階から、たたみかけるような増額に加えて、当初は50香港ドル単位で、端数は切り捨てられていたのが、途中から1香港ドル単位になったため、無駄なく使い切ることができる。

 さまざまな変更を即決し、システムを作ったけれども形骸化してしまうという事態を避けるために、利便性を最大限に高めていく歯切れの良さは、まさに香港らしいところだ。