新型コロナの新規感染者数は、ほぼ帰国者のみでの一桁台が続いている香港。それでも香港政府は、ひとたび収束した感染が再びぶり返した過去の苦い経験からか、飲食店などの制限解除には慎重になっていた。10月末からようやく1テーブルの最大人数が6人に増え、街には賑わいが戻って来ているが、11月に入って感染者数が一桁から10人台に増えたことで再度規制が強化され、11月半ばに再び4人に戻された。香港に帰国時の隔離も自宅隔離が不可となり、ホテル滞在が必須になるなど、第四波の発生をとにかく食い止めようという姿勢がある。

コロナ禍により、既存製品や技術をアレンジして対応製品を短期間で作ったスタートアップ企業を前回前々回と紹介してきた。今回は、なんと高校生発明家として名を成し、現役大学生でもある超若手科学者が率いる異色スタートアップ企業を紹介しよう。

発明コンクールからスタートアップへの道

 小学生の頃から発明にはまり、中学入学後から「発明クラブ」に属して、学生向けの発明のオリンピックと呼ばれる2015年開催の「第66回インテル国際学生科学技術フェア(Intel ISEF)」材料工学部門第2位を受賞。そんなサイモン・ウォン氏は、現在、香港中文大学物理学部4年生だ。

 「発明クラブ」時代から一緒に発明を続けてきた親友マイケル・リー氏と共に、Titanology社を起業したのは大学入学前の夏休み中だった。

サイエンス・パークのインキュベーションセンター内にあるオフィスで。左がサイモン・ウォン氏、右がマイケル・リー氏。共に弱冠23歳。リー氏は、学年の区切りが異なるオーストラリアでRMIT大学(ロイヤルメルボルン工科大学)を昨年卒業(写真:筆者が撮影、以下同)

 「発明クラブ時代に、『生活の身近なところから発明のアイデアを見つけよう』と、マイケルと2人でいろいろ案を練っていたとき、たまたま一緒に行ったトイレがあまりきれいではなくて。ドアハンドルに直接手を触れないために、わざわざ手を拭くためのペーパータオルでハンドルを包んで開けている人もいた。これを何とかできないかと考えて思いついたのが、光触媒活性での殺菌分解だった」

 光触媒を応用したナノコーディングは一般的に使われているものの、活性化に必要な光量が確保できなかったり、コーティングも剥がれやすく不安定だったりで、効果が十分に出ていなかった。ウォン氏は「ガラスに酸化チタンコーティングを施し、ハンドルの端に人体に安全な紫外線A波を使用した紫外線LED装置を組み込んで、継続的に活性化させる」という方法を発案。不安定だった従来のコーティングの欠点を補う高温での加工により、長期間にわたり安定させることに成功した。

青色LEDできらめくドアハンドル。コーティングも殺菌も肉眼ではまったく分からず、デザイン重視の製品に見えるが、高度な技術を使用している
発明コンテスト出品時には、ドアの開閉による発電機能も備えられていたが、製品化時点でこの機能は取り除かれた

 さらに高校在学中に、世界最大の発明イベントである2016年の「第44回ジュネーブ国際発明展」で金賞、エール大学科学工学協会(Yale Science & Engineering Association)主催のYSEA科学フェアアワードで「最優秀展示(The Most Outstanding Exhibit)」を受賞するなど、輝かしい評価を受けてきた。

 Titanology起業時には、香港新一代文化協会基金から45万香港ドル(約630万円)、中文大学TSSSU(大学でのテクノロジー スタートアップ支援スキーム)から50万香港ドル(約700万円)という公的資金援助を受けていることからも、期待の高さがうかがわれる。

2016年「第44回ジュネーブ国際発明展」での表彰状と金メダル

 「入学後には大学の研究チームから光触媒コーティングの特許取得を勧められて、支援を受けながら、米国、カナダ、中国、香港などで特許を獲得できた」