UXの視点から見た医療AI

 医療AIについて、社会的な視点で見ると、ELSI (倫理的、法的、社会的問題)を考えたり、バイアスや公平性の問題などが議論されたりする。今回は、本稿のテーマでもあるUXの視点から考えてみよう。

 UXは、人間と機械との体験、関係を考えることになるので、まずAIと人間との関係を考えてみよう。分かりやすくロボットのキャラクターで考えてみたい。アニメのロボットで代表的な「鉄腕アトム」と「機動戦士ガンダム」を比べてみる。鉄腕アトムは、21世紀の未来を舞台に、10万馬力のロボット少年アトムの話であり、自らが考えて自らで動く自律型のロボットである。AIで考えると、最初から最後までお任せすることができる。一方、機動戦士ガンダムは、宇宙空間でモビルスーツを着て戦う話であり、操縦者が中に入り、ロボットを操作することで、宇宙空間で戦うことができるロボットである。AIで考えると、ある意味、人間の拡張であって、人間のできることが増幅されている。もちろん、最終的判断は人間に任されていることになる。

 現時点の医療で考えてみると、医療については、最終的には医師、そして患者本人が決めて治療を進めていくことになる。そうなると、医療にAIを適用する際には、最終判断を人間に残す、ということで考えると、機動戦士ガンダム型、ということがいえる。鉄腕アトム型で考えると、ロボットやAIに人間の仕事が奪われる、という見方になるものの、機動戦士ガンダム型で考えると、人間のできることが増え、逆にいえば、人間がやるべき部分のみ人間がやるようになり、その他をロボットやAIが支えていく、ということになる。

 将棋においても、以前、将棋電王戦が行われていた。これは、プロ棋士(人間)とコンピューター将棋ソフトウェア(AI)が対局するというイベントであった。電王戦のコンピューター将棋ソフトウェアの使い方としては、AI単独型になるため、鉄腕アトム型である。結果としては、コンピューター側がプロ棋士に勝つことなどがあった。逆に、この一連のイベントの中には、電王戦タッグマッチトーナメントも開催されており、棋士とコンピューター将棋ソフトウェアが一緒にチームを組んで、対局するというものであった。こちらは棋士が自分の考えでも次の手を指せる一方、コンピューターの結果で指すこともでき、コンピューターの結果を見つつ最終判断は人間がしていく、という仕組みである。いわば「機動戦士ガンダム型」である。

 筆者は、この人間とAIがチームを組んで戦う、というAIタッグ型、機動戦士ガンダム型が、現在の医療には合っていると思っている。最終判断は人間がするものの、判断するための材料や情報はAIが出し、サポートしていく、というものである。

 もちろん、技術の視点で考えると、AI単独型である鉄腕アトム型でもAIタッグ型の機動戦士ガンダム型、基本的には同じ技術を用いることになるため、設計哲学が違う、ということになる。

図1●AI単独型(人間 vs AI)とAIタッグ型(人間とAIがチーム)(出所:テンクー、図2とも)