医療分野におけるクラウド

 国内の医療分野におけるクラウドも分野ごとに違いはあるものの、少しずつ進んできている。プライベートクラウドとして、早く実施した事例としては、福井大学医学部付属病院が挙げられる。福井大学医学部附属病院では、2011年から仮想化をし3)、船舶用冷凍コンテナにプライベートクラウド環境による病院情報システム(HIS)を構築しているとのことである4)

3)福井大学病院におけるICTの活用と効果についてICTの活用と効果について
4)福井大学医学部附属病院(福井県永平寺町)クラウド環境で病院情報システムを構築(日経XTECH)

 その他、医療用の画像保存通信システム PACS(picture archiving and communication systems)や臨床試験支援のためのEDC (electric data capturing)について、クラウド化の事例を見かける。またクリニックを中心にクラウド型電子カルテや、クラウドを利用した遠隔読影サービスなど分野ごとにクラウドが導入をされている事例が出てきているのが現状である。もちろん、民間セクターの利用のレベルと比較すると、あまり進んでいないと見えるくらいである。

 医療情報については、この分野を知っている方には有名であるが、3省3ガイドラインが存在する。厚労省5)、総務省6)、経産省7)がそれぞれ出している医療情報は個人情報など機微な情報であるため、医療情報のクラウド(ASP、SaaSを含む)利用に向けた安全管理、セキュリティーについて記載されたガイドラインとなっている。それぞれのクラウド事業者が各リファレンスを、Microsoft Azure向け8)、Amazon Web Services向け9)、Google向け10)を出すなどしている。この3省3ガイドラインを参照して、クラウド化をしていくのが必要である。

5)厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5版」(平成29年5月)
6)総務省「クラウドサービス事業者が医療情報を取り扱う際の安全管理に関するガイドライン 第1版」(平成30年7月)
7)経済産業省「医療情報を受託管理する情報処理事業者における安全管理ガイドライン 第2版」(平成24年10月)
8)医療機関向けクラウドサービス対応セキュリティリファレンス(JBS)
9)日本の医療情報ガイドライン(AWS)
10)3 省 3 ガイドライン(日本)(Google)

 2020年3月現在、総務省と経済産業省のガイドラインの2つは統合・改定され、「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」として案が公開されている11)。医療情報システムの特性に応じた必要十分な対策を設計するために、一律に要求事項を定めるわけではなく、リスクベースのアプローチに基づいたリスクマネジメントプロセス、および、システム運用についてのリスクコミュニケーションを重視することの方針で進められている。

11)「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」(案)

 医療のクラウドといっても、対象とする医療によって様々な対応に分かれていくだろう。医療のクラウドが進むにつれて、個人情報やセキュリティーなどの安全対策はきちんと行うことはもちろんであるが、これまで閉じていた医療情報や医療従事者に対して、適時の適切な情報提供が可能となり、情報技術による支援がますます進んでいくのではないか、と思う。疾患に関するガイドラインを適切なタイミングで提示することや、医療従事者に対して、リマインダや注意点などをお知らせすることも可能となるだろう。この結果、使いやすさ、見やすさ、適切さなどが議論の対象となり、医療分野のUXに注目が集まっていくだろう。

 次回、がんのゲノム医療におけるクラウド活用の実際を見ていく。

(タイトル部のImage:artinspiring -stock.adobe.com)