研究と実用化における谷

 このアカデミックの研究とアートとのギャップと同じようなことが、科学技術における研究と実用化、商用化における間にも存在すると感じている。一般的に産学連携においては、基礎研究と市場に出す製品との間の「死の谷」が存在するといわれており、それと近いものだろう。

<b>図1●フォーミュラカーと商用車のギャップ</b>(出所:テンクー、図2も)
図1●フォーミュラカーと商用車のギャップ(出所:テンクー、図2も)
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 比喩として自動車技術を取り上げ、モータースポーツのフォーミュラ1(F1)で考えてみる。フォーミュラカーを作って、その専用のドライバーが乗り運転し、最高速度のチャンピオンデータを取り、それをまとめて知見として発表する。こうしたフォーミュラカーの開発では、専用のシステムを開発し、そのシステムを操作する人は決まっており、その中で最高性能がきちんと出せ、データを出し、適切にまとめ実証すればよい。

 一方、商用車を考えると、誰もが運転でき、安全に乗れ、フォーミュラカーほどの最高速度は出ないが、安定して時速100kmではきちんと走れるようにする必要がある。走れることは必須であるが、開発において、重要視されるのは最高速度を出すことではなく、安定性や安全性、操作性など、社会の中で実際に使う際に必須となる品質に関わるところが重要になる。もちろんフォーミュラカーで開発した要素技術は使うものの、商用車の設計はフォーミュラカーとは同じではなく、商用車を想定してアレンジして設計し、最適化して品質を確認しつつ、商品として成り立たせていく。

 フォーミュラカーと同じような位置付けにあるのが研究であり、商用車と同じような位置付けに実用化したシステムがあると考えてみる。商用車には商用車に適した設計、システムの最適化が必要となるのと同じように、実用化するためのシステムにおいても、そのための設計と最適化、品質管理が必要となるだろう。研究で論文化されたり実証されたシステムであっても、誰でも操作可能、安定性向上、利用目的と場所に応じた最適化が必要となるだろう。

 このようにフォーミュラカーと商用車の違いのように、研究から実用化するのにも同じようなギャップがあり、そこを実用化、商品化の際には埋めていく必要があるのではないかと感じている。

<b>図2●研究と実用・商用化とのギャップ</b>
図2●研究と実用・商用化とのギャップ
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