研究から医療に入ったゲノム医療

 ゲノム研究の基礎となった「ヒトゲノム計画」は、1990年に米国政府のファンディングにより始まり、2003年に完了している。2003年は1953年のワトソンとクリックのDNA二重らせん構造の発見からちょうど50年目である。

 そして、その後もゲノム関連の研究は進んでいった。ゲノムの読み取り装置(シークエンサー)の価格が下がり、一人ひとりの方のゲノムを読むことも現実的な価格と時間になり、ゲノム医療の導入が進み始めた。日本において、ゲノム医療の保険収載はがん遺伝子パネル検査の保険適用の形で2019年6月に始まり、本格的に社会実装されることになった。振り返ると、平成が1989年から2019年まで、と考えると、ゲノム研究は平成の30年間で研究が進み、令和に入り、ゲノム医療に足を踏み入れた、といえる。

 この研究から医療に入ってきたゲノム医療であるが、研究から実用化のギャップというのを当然、乗り越えていく必要がある。やはり研究と医療の間にはギャップはあり、現在、社会実装を通して、様々な取り組みが行われている。品質管理としての薬事承認もその一つの山でもあり、がん遺伝子パネル検査としての「検査」になるのも商用化の一つの山である。

 筆者も、2011年に研究者から会社を起業し、10年ほどたってきているが、この分野をきちんと社会実装し、IT(情報技術)を活用して貢献できるように、研究から実用化・商用化のギャップ、谷を渡るところを進めていこうとしている。様々なギャップが存在しているが、それを一つ一つ乗り越え、多くの医療者、患者さん、患者さんご家族に届けられるように、本稿のタイトルでもあった「UXで解くゲノム医療」を、実際の現場でさらに推進していきたい。

(タイトル部のImage:artinspiring -stock.adobe.com)