がんを、暴走している車に例えると…

 がんは、がん細胞の遺伝子の変化の積み重ねによって起こる。この遺伝子の変化を「変異」とも呼ぶ。細胞は毎日、何らかの変化で遺伝子に傷がつき、それを修復している。それがうまくいかず、重要な場所に遺伝子の変異が起きたときに、遺伝子から生まれるタンパク質も異常が起き、がん化していく(図2)。このがん細胞の遺伝子変異がどの部分かにより、がんの特徴を捉えることができる。暴走している車に例えると、アクセル(がん遺伝子)が壊れているのか、ブレーキ(がん抑制遺伝子)が壊れているか、を調べることと同じ感覚だ。がんを臓器別に捉えるだけでなく、遺伝子の変異を見て、サブタイプ分けしていくことができるようになったわけだ。

図2●がんの発生

 この遺伝子の変異、タンパク質の異常が起きているがんを対象に効果を発揮する薬が出てきた。これらの薬は対象の異常を持ったがん細胞にはよく効くため、がんの特徴を適切に捉えることで、それに合った薬(分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬)を選ぶことができるようになってきた。つまり、がんにおいては、ゲノムのデータを解析することで、適切な薬の選択、つまり医学におけるアクションを取ることができるようになったのが特徴である。

 このがんの遺伝子パネル検査、国内では保険診療が2019年6月に始まった。3割負担で済む保険診療のほか、治療費が10割負担の先進医療、また自由診療でもがんの遺伝子パネル検査自体は国内で行われている。保険診療では、国内では、「OncoGuide NCCオンコパネルシステム」と「FoundationOne CDxがんゲノムプロファイル」が提供され始めている(関連記事)。

 さて今回、タイトルにもなっているUXについて少し説明しよう。UXとは、ユーザーエクスペリエンス(user experience)の略。似た言葉として、UI (user interface:ユーザーインターフェース)がある。人間と機械の関係を考えると、人間が操作をする際に利用するインターフェース、視覚や聴覚も含めて操作する部分がUIとなる。UXは、ユーザーが体験する全て、経験全体を指し、ユーザーが何かの製品やサービスを触ったときの最初から最後までの体験や印象など全部をひっくるめて対象としている。何かを体験をするにはインターフェースが必要なため、UIとUXは切り離せず、UI/UXと呼ぶこともある。また、UI/UXを設計するのはデザイナーが多いため、UI/UXデザイナーとウェブの分野などでは呼ばれたりする。

 がんのゲノム医療をUXの視点から見ると、医療現場にはたくさんの関係者、ステークホルダーが関わっている。患者さんとその主治医だけでなく、患者さんのご家族、遺伝カウンセラーなども関わっており、多くの方により成り立っている医療である。医療を受ける側、患者側の立場になって考えると、がんのゲノム医療において、何を検査して、何を得られるのかをきちんと理解できることが大事だ。患者ご自身はもちろん、ご家族も理解をして、治療に向き合っていけるとよい。ここにUXの出番はある。