人材登用は本当に難しい。今でも答えは分らない

組織を活性化させるには人材登用が重要です。川淵さんが考える人材登用の在り方について教えて下さい。

川淵 人材登用は難しいね。だいぶ失敗しているもん。あまり言えないけど(笑)。

あまり聞かないようにします(笑)。

川淵 本当にいいと思う人を見つけるというのは至難の業だね。Bリーグをスタートするとき、僕が仮にチェアマンになったとしても長くやる気はなかったから、僕の跡をすぐ引き継ぐ人がいないか、十何人かの人に会ったんだよ。でもやっぱり難しかったね。人を見つけるのは本当に難しい。

 バスケットボールの2つのプロリーグを統合させるためにいろいろやっていて、血圧がもう200ぐらいになって、顔を真っ赤にしてやってたときに、今のチェアマンの大河(正明)*6が来て「川淵さん、しんどそうですね」と言ってくれて。いろいろ話していたら、彼が中学、高校とバスケットボールをしていたことを知った。そんなこともあって、(実際に会った十何人の候補者ではなく)大河にチェアマンをやってもらうことになったんだよね。

 リーダー選びで一番難しいのは、「能吏」と「リーダー」は違うということだよな。ものすごく仕事ができて、言ったことに対してきちんと対応して、それをかみ砕いた形でちゃんと下に伝えていける能吏だとしも、なかなかリーダーにはなれるとは限らない。

 それと、僕と会う人はみんな感じがいいんだよ(笑)。裏へ回ったらまるで変わっちゃたりするんだけど、そこまでは読めないね、はっきり言って。だから、人材を「どう見極めたらいいですか」と僕に聞かれても、答えは「分からない」だね。

 普段から自分の周りでスタッフとして使って、判断力、人望、そして、きちっとした理論武装がちゃんとできているか。そういったことを見極めた上でとりあえずやってもらって。それでだめなら途中でまた替えるということになるけど……。本当に難しい。

(写真:加藤康)

川淵さんが今、「誰か素晴らしいリーダーはいるか」と聞かれたら、どなたを挙げますか。

川淵 僕が直接選んだということに限っていえば、村井(満)さん*7が一番じゃないかな。村井さんがJリーグのチェアマンになって、今までとはまるで違う改革をやっているからね。

なぜ村井さんを選ぼうと思ったのですか。

川淵 Jリーグをつくるうえで、僕にとっての原点というのは、ドイツ(当時は西独)のデュイスブルクにあるスポーツ・シューレ*8なんだよね。そのスポーツ・シューレに憧れて、こういうものを日本につくりたいというのが最大の夢だった。

 みんなそれは知っていたはずなんだけど、「ただのトレーニングセンターじゃないか」といった捉え方なんだよね。でも、村井さんはそうじゃなかった。実際に見に行って「ここに来て、川淵さんはどんなふうに感激したんだろう」「どういう思いを抱いたのだろう」と、僕の気持ちを体現しようとしてくれた。そこから僕がどういうことを思いつき、どういうふうにしていったか。そんな原点を確認しようとする姿勢は、やっぱりうれしいし、大切だよね。


注)

*6 大河正明(おおかわ・まさあき)氏。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)、日本プロサッカーリーグ 理事、常務理事、日本バスケットボール協会 専務理事・事務総長などを経て現職。日本バスケットボール協会(JBA)副会長、日本オリンピック委員会(JOC)理事も務める。

*7 村井満(むらい・みつる)氏。日本リクルートセンター(現・リクルートホールディングス)入社。同社執行役員、リクルートエイブリック(現・リクルートキャリア)社長、Jリーグ理事などを経て2014年1月に第5代チェアマンに就任。日本サッカー協会(JFA)副会長、日本プロスポーツ協会理事も務める。

*8 ドイツ各地にある「スポーツ・シューレ」と呼ばれる総合型地域スポーツクラブの1つ。1960年に川淵氏が訪れて感銘を受けたことが、後のJリーグの原点となった。