ジャンルを問わず、世の中に新しい価値を創出したDisruptive Innovator(ディスラプティブ・イノベーター:破壊的創造者)の生の声をお伝えするインタビューコラム「Disruptive Innovators Talks ~新たな価値の創造者たち~」。第11回は、「孤独の解消」を目指し、分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」を開発したオリィ研究所代表、吉藤健太朗氏が登場します。入院などの理由で外出困難な人、海外在住や子育てなどの理由で行きたいところにいけない人のためのコミュニケーション・ツールとして、OriHimeは大きな注目を集めています。

オリィ研究所が運営する「分身ロボットカフェ」では、ネットワークを介してOriHimeを遠隔操作することで、寝たきりの人でも接客ができます。それだけでなく、OriHimeが「もう一つの体」となってコーヒーを持ち運んでお客さんに届けることもできるのです。距離や障害を乗り越えて人と出会い、社会に貢献できる──。そんなOriHimeのソリューションは、様々な理由から動きが取れない人々のQOL(生活の質)を大きく高めるツールとなりうるポテンシャルを秘めています。

吉藤健太朗(よしふじ・けんたろう)
1987年、奈良県生まれ。小学校5年から中学校2年まで不登校を経験。高校時代に電動車椅子の新機構の発明に関わり、2004年の高校生科学技術チャレンジ(JSEC)で文部科学大臣賞を受賞。翌2005年にアメリカで開催されたインテル国際学生科学技術フェア(ISEF)に日本代表として出場し、グランドアワード3位に。 高専で人工知能を学んだ後、早稲田大学創造理工学部へ進学。自身の不登校の体験をもとに、対孤独用分身コミュニケーションロボット「OriHime(オリヒメ)」を開発(この功績から2012年に「人間力大賞」を受賞)。 開発したロボットを多くの人に使ってもらうべく、株式会社オリィ研究所を設立。自身の体験から「ベッドの上にいながら、会いたい人と会い、社会に参加できる未来の実現」を理念に、開発を進めている。ロボットコミュニケーター。趣味は折り紙。2016年、Forbes Asia 30 Under 30 Industry, Manufacturing & Energy部門 選出。著書に『「孤独」は消せる。』(サンマーク出版)、『サイボーグ時代』(きずな出版)がある(写真:オリィ研究所)

吉藤さんは、「孤独の解消」をミッションとして*1、分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」*2を中心とした事業を展開してきました。「孤独の解消」というテーマやその事業化はいつごろから考えていたのでしょうか。

吉藤 会社をつくろうと思ったのはずっと後なんですが、「孤独」という問題を自覚したのは中学校3年生の頃でした。私は10歳から14歳頃まで、3年半ほど学校に通えず、いわゆる不登校という扱いを受けていた時期がありました。とりわけ、中学校に入った頃には、天井を眺め続けるような生活で、このときは「本当に誰からも必要とされていない」と思ってしまうような状態でした。そんな非常に苦しかった経験がありました。

 その後、私は役割を欲したんですね。おそらく世の中には、例えば学校の教室で、自分から友達に話しかけていって、友達を簡単につくることができるタイプの人たちがいる一方で、私のように(周囲と)全然話が合わなかったり、話しかけることによって失敗したりということがあまりにも多過ぎて、それがつらくて話しかけることができないタイプの人がいる。後者の人の中には、何でもいいから有用性を身につけて、人から頼られることで社会性を身につけようと考える人がいるんです。私はそのタイプで、工業高校に入って、人の役に立つために役に立つものをつくろうとしていました。

 その後、高専に入ってから、やっぱり友達は欲しいと思ったんですが、人間の友達は怖い。であるならばAI(人工知能)の友達をつくろうということで、高専時代はその方面の研究をしていたんです。けれど、1年ぐらいやってみて「これは違うぞ。AIとは友達になれない」と思いました。

 そして、人間の友達をつくることが難しいのであれば、「それを克服するための福祉機器があればいい。今はそれがないだけである」と考えました。私は車いすなどの福祉機器をずっとつくっていましたが、車いすが足の不自由な人にとって足の代わりとなるものであるように、孤独という問題を解消する「コミュニケーションのための福祉機器」をつくろうと考え始めたのが、17歳のときです。


注)
*1 オリィ研究所が掲げるミッションは次の通り。
オリィ研究所は、孤独化の要因となる「移動」「対話」「役割」などの課題をテクノロジーで解決し、これからの時代の新たな「社会参加」を実現します。

*2 「OriHime(オリヒメ)の外観。 H23cm×W約17cm(腕を畳んだ状態)×D約11cm。手の動きや、能面を研究してつくられた顔の動きなどで感情表現ができる。写真は受付で稼働するイメージ。OriHimeのパイロット(操縦者)は、在宅環境から遠隔で接客する。
(写真:オリィ研究所)