事故の発生件数は、自動車より少なくなるはず

自動運転車の開発は加速し、高度なレベル4や5の実用化も近い将来急激に普及していきそうです。空飛ぶクルマも、我々の予測を超えるような短期間で実用化する可能性があるでしょうか。

福澤 自動運転の実用化について言えば、(私のような)自動車業界の人間から見ると、思ったより遅かったですね。自動車メーカー各社は自動運転の実用化に向けて、以前からかなりアグレッシブな目標を立てていました。その目標に比べると(自動運転機能を持つ市販車の登場は)やや遅いくらいでしたから。

(インタビュー中のオンライン画面より)
(インタビュー中のオンライン画面より)
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自動運転で実用化のネックになっていたのは技術面ですか、それとも法律などの制度面でしょうか。

福澤 結局、世の中の人たちの認識・感情を含めた社会情勢だと思います。多くの人たちが「これでいい」と思えればそれでいけますし、駄目ということになれば、より厳しい法律や規制をクリアする必要が出てきます。それは、自動運転のレベルによっても異なります。一定の条件下での自動運転であるレベル4ならば、現状でもある程度は受け入れられていると思います。しかし、条件なしですべての操作を自動化するレベル5は、まだ厳しいかもしれません。

 結局、「どこまでの安全性を求めるか」という世の中の合意形成によって話は変わってきます。人間が運転するクルマと同じ事故発生率を許容するのであれば、自動運転の普及は早いと思います。人が運転していても、同じように事故は起きるわけですから。しかし、「それは許されない、自動運転になったら事故は減るべきだ」という認識が一般的であれば技術開発は大変です。

空飛ぶクルマについても、最初のうちは「クルマが空を飛ぶのは、ちょっと怖いな」と感情的に反発されるかもしれませんね。

福澤 空飛ぶクルマについてのネットニュースのコメント欄を見ていると、全員がそうではありませんが、確かにそういう意見が書き込まれていますね。

空飛ぶクルマが普及していったとき、事故発生率は地上を走るクルマと比べてどのようになると予想していますか。

福澤 ものにぶつかるかどうかという観点でいくと、空にはものがありませんから飛行中の事故発生率はほぼゼロになります。ただ、地上を走るクルマは何かあったらその場に停車できますが、空飛ぶクルマが空中で停止すると落下してしまいます。その意味では安全確保の難易度は上がります。

 そもそも空飛ぶクルマの安全性はエアバスやボーイングの旅客機と同じカテゴリーの安全基準で評価されますし、地上を走るクルマにはクルマの安全基準があります。ですから単純な比較は難しいのですが、同じ機体/車体数当たりの事故の発生件数で比べると、空飛ぶクルマの方が少なくなるはずです。

空飛ぶクルマには、空を飛ぶだけでなく地上の道路を走ることができるタイプも存在します。その際の安全基準や操縦者の免許はどうなるのですか。

福澤 SkyDriveの空飛ぶクルマは、まず、空を飛ぶことを目標としていますから、当初は航空機カテゴリーの安全基準を満たすことを目指しています。道路を走るタイプの開発はその後になりますが、その際は、航空機とクルマの安全基準を両方満たす必要が出てくると思います。操縦者の免許については、恐らく現在のヘリコプターの免許がベースになると考えて、それを議論する官民の協議会にSkyDriveからもいろいろ提案しているところです。事故が発生したときの保険制度についても、大手損保会社と非公式に情報交換しています。

そうしたことをきちんと説明していけば、不安に思っている人たちにも理解してもらえそうですね。

福澤 理解はしてもらえると思います。しかし、心の底から納得してもらえるかどうかについては、まだ正直分かりません。