連想を喚起し、心に何かを残す

11月6日にグランドオープンを迎えた角川武蔵野ミュージアム*3では館長を務めますね。

松岡 KADOKAWAが所沢の浄水場の跡地に物流拠点などを開発するに際して、その一角に文化施設をつくることになったんですね。そこには既存の図書館と博物館と美術館の3館を融合するような、日本にないものをつくりたいということで、当初から僕も参画していました。建築設計は隈健吾さんに依頼して、中身は(博物学者、小説家の)荒俣宏さんや僕がつくっていく。僕には最初は図書館をということだったんですが、最終的に(全体を)「松岡にまとめてもらおう」ということになりました。


注)
*3 角川武蔵野ミュージアム(埼玉県所沢市)の外観。設計は隈研吾氏。竹、木、石、ガラスなど様々な素材を操る隈氏の建築の中で、このミュージアムについて隈氏は「石の建築の集大成」と語っている。
(写真:日経BP 総合研究所)
(写真:日経BP 総合研究所)
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ミュージアムの中の「エディットタウン」*4では独自の九つの分類で本を並べていきます。これは、どんなものになるのですか。

松岡 僕は、従来の十進分類に対抗するという意味もあり、九つの大きな“分類”をつくりました。「遺伝子やオスとメスの進化や昆虫の本を追っていくと王朝の古典や恋愛本にたどり着く」といったようなコースをつくったんです。男と女と生物学と恋愛小説とラノベって「結局同じでしょ」ということです。そんな発想の“分類”を九つ、エディットタウンに入れ込んでいます。


注)
*4 上図は角川武蔵野ミュージアム内のエディットタウン。館長の松岡氏がプロデュースする「本の街」だ。本とそれにまつわる知的情報と付加情報を「記憶の森へ」「日本の正体」「男と女のあいだ」などと名付けて独自分類した9ブロック(書区)に分けて展開する。下図は高さ約8mの巨大な本棚におよそ5万冊を収蔵する「本棚劇場」。角川書店のこれまでの主な刊行図書と角川文化財団の蔵書を収める。
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(写真:2点とも日経BP 総合研究所)
(写真:2点とも日経BP 総合研究所)
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「想像力とアニマに遊ぶミュージアム」というキャッチフレーズにはどのような思いが込められていますか。

松岡 もともとのコンセプトは、アソシエーションを生かすということ、つまり連想の翼を広げるということなんです。想像力の翼を広げて連想を喚起するミュージアムにしたいというのが私の考え方です。その連想によって、誰かと会いたくなったり、何かを食べたくなったり、着たくなったり、聴きたくなったりするように、このミュージアムで何かを得たくなるようにしたい。

 ただし、ミュージアムですから見るだけです。何かモノを持ち帰れるわけではない。所有はできませんから。それでもミュージアムは何かを届け、残さなくてはいけない。そのためには、「アニマ」──「魂」とか「心」を意味する言葉ですが──に訴えていかないと届かないわけです。

 例えば映画は、今はネット配信が盛んになってきてそうでもなくなってきましたが、映画館に行かないと“持ち帰る”ことはできないですよね。あるいはリゾートに宿泊して、そこで宿泊費を払っても、リゾート施設自体は買えない。そうすると、何か心に移っていく要素が必要になります。このミュージアムについて言えば、連想によって何か魂の動きが起こって、それが継続されていくような場所にしましょうという考え方です。