収入の最大化からコストの最小化へ発想の大転換

 しかしDRGの導入により、病院経営は「コストをいかに抑え、質を下げずに同じ結果を出せるか」という発想の大転換を迫られた(図1)。結果、クリティカルパスの見直し、治療の外来シフト、在院日数の短縮を行った。「収入を上げてさえいれば大丈夫」という発想、筆者はこれを「収入最大化の呪縛」と呼んでいる。DRGの導入により、米国の病院は「収入最大化の呪縛」からの決別を強いられたのである。「収入の最大化」から「コストの最小化」はまさに天と地が入れ替わるようなパラダイムシフトであった。

図1●収入の最大化からコストの最小化への発想の大転換
図1●収入の最大化からコストの最小化への発想の大転換
(出所:アキよしかわ著『日本人が知らない日本医療の真実』[幻冬舎、2010年]第三章より)
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 日本でも診療群分類別包括支払い制度DPC/PDPS(Diagnosis Procedure Combination/Per-Diem Payment System、以降DPC)と呼ばれる日本版DRGのようなものが2003年に導入された。しかし、DPCとDRGは根本的に異なる。

 DRGが「一入院当たり定額払い」を定めているのに対し、20年遅れで導入された日本のDPCは「入院一日当たりの定額払い」を設定している。つまり、DPCは1回の入院に対して支払うのではなく、入院期間の日当点を足し算して支払われるので、一回当たりの入院のコストを最小化するための経営面でのインセンティブが働きづらいのである。

 確かに、DPCでの日当点は在院日数がある一定の期間を超えれば徐々に下がる収穫逓減(diminishing marginal returns)を制度に盛り込んではいる。しかし、一入院当たりの定額払いとは異なり、日当点の足し算では、どうしても病床が空いているのであれば、入院期間を延ばした方が有利という病院側の経営面でのインセンティブが働き、「収入最大化の呪縛」からの決別は難しい。

 DPCが日本で導入されたのは2003年であるが、なぜ、それまでに既に欧米で20年以上の経験値を持つDRGではなかったのか、という世間一般での疑問に加え、米国の医療経済学者である筆者は、「入院一日当たりの定額払い」のDPCに対して、その導入当時から現在に至るまで違和感を持っている。