集患による勝者と敗者の選別

 次に「避けられぬ運命」に関して説明しよう。平均在院日数に入院件数を掛け合わせたものが、その病院が年間に必要とする病床数である。図2で平均在院日数がd0からd1へと、入院件数がq0からq1へと減少すると、必要ベッド数はd0×q0の積からd1×q1の水色で示された面へと減少する。これは特に中小病院にとっては、想像を超えるチャレンジであろう。500床の病院で100床空床になっても(少なくともしばらくは…)機能を維持することは可能かもしれないが、150床の病院で100床空床になってしまったら、その存続は苦しい。

図2●必要病床数の減少

 しかし、必要病床数がd1×q1のままでは病院は空きベッドばかりになってしまう。病院はどのように対応すべきであろうか。在院日数をd1からd0へと引き延ばすことによって空床を避けようとする病院もあるであろう(1入院当たり定額制度のDRGではこのようなオプションはあり得ない。日本のDPCの下では、経営コンサルティングに関わる我々の制止にもかかわらず、実際にそのような選択をする病院を多数見て来た。在院日数の引き延ばしは戦略的対応を遅らせるだけであり、解決策にはならない危険な誘惑にすぎない)。病院の取るべき戦略的王道としては、まずは患者の数を増やす努力(集患)を行うべきであろう。結果として、患者を増やせる病院と、増やすことのできない病院に分かれる。近辺の医療機関との連携を高め、積極的な紹介・逆紹介(近隣の医療機関からの患者紹介と紹介された患者を戻すこと)で患者をq1からq1*へと増やすことができた病院は、病床稼働率を維持することができる(図3)。

図3●集患による病床規模の維持

 ここで重要なのはパイ(地域で入院を必要としている患者数)には限りがあることを認識することである。集患の努力によって患者数を増やすことができた病院の陰には、患者を減らした病院が必ず存在する。在院日数を引き延ばすことで問題解決を先延ばしした病院は時間を無駄にしただけであり、明日には患者が減るであろう。

 技術革新は日々進み、包括的な診療報酬からのプレッシャーも強まる(図4)。平均在院日数はさらにd2へと短縮される中、集患により入院患者数をq2へと増やすことができる「勝ち組」は病床を維持でき、集患ができない急性期病院はスケールダウンか消滅、あるいは急性期を脱した患者を受け入れる後方支援病院への病床転換という選択を迫られる。これが日本の病院とそれらを取り巻く強い流れであり、避けられぬ運命である。

図4●集患による勝者と敗者の選別

 避けられぬ運命とは、同じ土俵で競争する限り、急性期の一般病院は勝者と敗者に選別されるという事実である。厳しい現実は、一つの病院にとっての増患は、近辺の他の病院にとっては患者が減ることを意味している。やがて病院数も激減するであろう。限られたパイを奪い合うゼロサムゲームであり、壮絶な椅子取りゲームである。病院経営者にとっては大変な時代である。