2020年4月に、時限的特例的措置として、初診から疾患制限なく利活用が認められたオンライン診療。約半年が経って、恒久化の方向性で議論が進みつつある。一方で医師会からは、適切な診断が本当にしうるか、医療の品質や安全性を確保するためにはやみくもに初診から認めるべきではない──といったリスクに配慮した検討の必要性が提唱されている。

では患者の声はどうなのか。野村総合研究所(NRI)では通院患者を対象に今年9月にアンケートを実施した。その結果、多くの患者がオンライン診療など新たな受診方式に関心を寄せていることが分かった。本コラムでは、アンケート結果を分析したうえで、患者を起点とした2030年の地域医療のあり方を提言したい。第1回の本稿では、患者の受診行動の変化から臨むべきオンライン医療の姿を探る。

オンライン診療の経験者は6%

 新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、2020年4月7日に首都圏を中心とした7都道府県に対して緊急事態宣言が発令され、さらに4月16日にはその範囲が全国へと拡大された。外出自粛が要請される中でも、治療を必要とする患者に医療を届けるため、4月10日に時限的特例的措置として、オンライン診療及びオンライン服薬指導が、初診から疾患制限なく活用することが認められた。

 これにより、電話・ビデオ通話によるオンライン診療を実施する医療機関は、全国で1万4500超*1となり、導入率は13%となった。そのうち、ビデオ通話によるオンライン診療を提供する医療機関は7000施設を超える*2とみられる。オンライン診療料が新設され保険適用となった初年度(2018年度)の届出施設が970であったことと比べると、新しい診療方法として全国に提供体制が広がった。

 一方で、患者の利用実態はどうか。NRIが、9月に実施した患者アンケート*3では、緊急事態宣言が発令された以降に治療を受けた方のうち、電話を含むオンライン診療を経験した方が6%という結果であった。アンケートにおいては、オンライン診療で治療する疾患の第1位が高血圧患者だったが、仮に全体の6%がオンライン診療を受診したとすると、全国で約60万人*4の高血圧患者がオンライン経由であったこととなる。

患者の受診控えが医療機関の経営にも影響

 一方で、対面診療を求める患者や、検査などで医療機関に通院しなければならない患者がほとんどであり、受診をした患者の94%は対面診療のみで治療をしている。そのため、緊急事態宣言発令中は、治療が必要にも関わらず受診を控えて重症化する事例も上がっていた。2020年9月時点でも、継続的に通院している患者の、約1割が受診を再開しておらず、重症化や体調不良を我慢し、QOL(Quality Of Life、生活の質)が低下することが懸念される。

緊急事態宣言以降の受診控えの実態(2020年9月17日時点の受診状況)。治療が必要とされながら受診を控えている人が約1割いる(出所:野村総合研究所)

 患者の受診控えは、医療機関の経営状況にも反映されている。9月9日に日本医師会が発表した、4月から6月の診療所経営状況の結果を見ると、緊急事態宣言で外出自粛が要請された地域の診療所の医業収入は、前年同月比で4月はマイナス15.4%、5月はマイナス16.5%となり、発令が解除された6月でもマイナス8.0%であった。患者の約1割の受診控えが、6月の医業収入に反映しているとみられ、今後も恒常的に医療機関への経営にマイナスのインパクトを与える可能性がある。

オンライン診療でもいつもの医師に診てほしい

 今回、新型コロナウイルスの感染症拡大により、オンライン診療の認知が患者に広がり、アンケートではオンライン診療未経験者の患者の13%が今後利用したいと考えていることがわかった。さらに、オンライン診療に「関心を持っている」とした患者も約39%いた。

 オンライン診療は、一度利用するとまた利用したいという患者が多いといわれている。このことを勘案すると、既存の利用患者、利用希望患者、関心を持った患者を合わせると、患者の半数がオンライン診療を活用するという未来が訪れる。仮に、今の患者数で置き換えると、たとえば高血圧患者では497万人*4がオンライン診療を受けることとなり、年間8950億円の医療費がオンライン診療経由となる。

 感染症拡大により、非対面・対面、それぞれの価値が問われている。医療機関においても、変化している患者ニーズを捉え、非対面のオンライン診療のインフラを整備しなければ、経営困難が続く恐れもある。

オンライン診療の医療機関の選び方。半数以上の方が、これまでのかかりつけの医療機関でオンライン診療を受けている(出所:野村総合研究所)

 患者も、ただ利便性だけでオンライン診療を選択しているわけではない。利用者に聞くと、かかりつけ医が実施するオンライン診療を受診した方、もしくは、かかりつけ医の紹介でオンライン診療を受診した方が73%もいた。つまり、いつも診てくれていた信頼している医師だからこそ、オンライン診療でも安心して受診できているということである。

医師と患者の双方にメリットがある枠組みが必要

 以上の結果を踏まえると、オンライン診療の恒久化の議論が出ている中で、「かかりつけ医」によるオンライン診療は、患者が最も求めている形であり、2030年のあるべき医療の姿であると考える。その実現に向けては、患者に対してかかりつけ医を持つことのインセンティブを付与すること、一方でかかりつけ医にとってはプライマリケアを担うことにメリットがあることの、両輪が必要であると考える。

 かかりつけ医機能の評価に関しては、診療報酬の中でも、機能強化加算という、患者の在宅医療をサポートする医療機関を評価する枠組みがある。もともと、オンライン診療は、通院が困難な患者への遠隔医療の提供が起点となり議論が進められきたため、かかりつけ医の機能評価には、在宅療養を支援する医師や医療機関の負担に応じるという目的があった。ただし患者側からすると、同じ診察なのに機能評価の加算要件を満たす医療機関で受診すると、診療報酬が高くなり、自己負担が増えるという印象を持ち、違和感を感じさせる側面もあった。

 今回の新型コロナウイルス感染症拡大による措置で、利用シーンが広がり、医療機関には通院できるが、仕事との両立で治療を中断してしまった患者や、通院の時間的負荷を減らしたい患者のオンライン診療の利用も増えている。患者が本人の希望でオンライン診療を選択する場合においては、患者にとってもメリットがあり、そのメリットに対価を支払う理由もある。

 オンライン診療の受診に、かかりつけ医であることを条件とするなど、患者がかかりつけ医を持つことのインセンティブにも繋がる仕組みを設計し、その医療を担うかかりつけ医に対しても、オンライン診療を含めて地域住民のプライマリケアを支えることへの評価を、診療報酬の枠組みの中で新たに設計することが求められるのではないだろうか。


*1 第8回経済財政諮問会議資料(内閣府、2020年5月29日)
*2 著者が公開情報等を基に集計
*3 実施期間は、2020年9月4日から9月6日と9月17日の計4日間。緊急事態宣言が4月7日に発令された7都府県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、兵庫県、福岡県)に住み、継続的に医療機関に通院している20~60代の男女を対象に実施
*4 「平成29年度 国民医療費の概況」(厚生労働省)を基に算出

(タイトル部のImage:Getty Images)