マギーズと病院内相談室の違い

 マギーズ東京も、他のマギーズセンターと同じく、予約なしで訪れることができる(新型コロナウイルス感染症対策のため、2021年3月末時点では事前連絡が必要。また電話・メール・オンライン対応もある)。2016年10月11日~2019年10月31日までに訪れた人の内訳は、がん経験者本人が42%、家族・友人が20%、医療者などの専門職が16%。本人と家族・友人のみに絞って、相談に来た人の状況をみると、抗がん剤などによる治療がいったん落ち着いて治癒を目指している人が32%、治療中の人が27%、治癒は考えていない段階の人が16%と、様々な段階でマギーズ東京を訪れていることが分かる。

新型コロナウイルス感染症の影響で、グループプログラムをオンライン開催するなど対策しているマギーズ東京
新型コロナウイルス感染症の影響で、グループプログラムをオンライン開催するなど対策しているマギーズ東京
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 ちなみに、最近は病院内にも「がん相談支援センター」などがんに関する無料相談窓口がある。こうした病院内の相談室との違いについて秋山氏は、「病院の相談室は予約制で、予約時に『こういうことを相談したい』と相談内容が固まっている人にはいいが、そうではない人には難しい」と言う。

 がん闘病中の人は、モヤモヤしていてとても不安な気持ちだけれど、一体何が心配なのか、何を聞けば解消できるのか、フォーカスが定まっていないことが多い。病状はもちろん、今後の仕事との兼ね合いや、子どものことなど、たくさんの要素が絡まり合って、漠然とした不安感につながっているのだ。秋山氏は、「こういうときは、問題を解きほぐしながら話を聞いていかなければならないが、病院内の相談室ではそこまでゆっくりと時間をかけることが難しい」と言う。

 「最近は、新型コロナウイルス感染症の影響で自粛生活になり、インターネットで情報を探しているうちに暗い気持ちになってしまって、吐き出したくて電話しましたという人もいる。1人で情報を探すうちに、高額な代替医療に飛び付いてしまうケースもある」(秋山氏)。そうしたことを防ぐためにも、マギーズ東京では、その人に必要な情報やサポートを、時間をかけて一緒に探している。

「マギーズに来る人はがんということを隠す必要がない」

 よろず相談所である暮らしの保健室と、がんに特化したマギーズ東京との違いは、「マギーズに来る人はがんということを隠す必要がない」(秋山氏)ということだ。「がんであることを人に知られたくないという人だけでなく、がん経験者同士でランチしているうちにヒートアップして、自分の赤裸々な治療体験などを大きな声で話し、気付いたら周囲をびっくりさせていた、というようなこともない」と秋山氏は言う。

 実際に、相談目的ではなく、がん経験者同士で安心しておしゃべりをするためにマギーズ東京を訪れる人もいる。医療知識のあるスタッフがいることで、経験者同士の会話で「絶対にこの治療法が正しい」といった極端な流れになったときも、スタッフが中和することもできる。そういった意味でも、来訪者たちは安心して話ができるという。

マギーズ東京のオープンなキッチン
マギーズ東京のオープンなキッチン
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 本人が家族や職場の人を連れて訪れることもある。家族でも、一人ひとり考え方が違っていて、「良かれと思って」自分の考えを押しつけたり、反対に遠慮して重要なポイントに踏み込めず会話がギスギスしてしまうことがある。そんなときに、スタッフが会話に混ざり、双方の思いの丈を聞いて建設的な会話にしていくことで、関係が改善することがある。秋山氏は、「本人たちだけで家庭内で話すときはケンカになってしまうような話も、スタッフが入ることでうまくいくことがある」と言う。