就労困難者が就職先を選んだり夢をかなえられる社会へ

 今後、福寿氏がさらに取り組みたいのが、「雇用の質」を高めていくことだという。「企業の中に当事者用の机が用意されていればいいということではなく、しっかり『働く』には、企業側の努力だけでは難しくて、当事者の働く意識も変わっていかないといけない」と福寿氏は指摘する。

 当事者の中には支援されることに慣れ、周囲のお膳立てや調整を当然と考えてしまう人もいるという。福寿氏は「こうした当事者の存在が企業のモチベーションを下げていることもある」と言い、企業も努力する一方、当事者も努力する意識を持つ、双方のアプローチが必要だと感じている。

「今後は雇用を生み出すだけでなく、『雇用の質』にもこだわっていきたい」と話す福寿氏

 企業側の努力として、福寿氏は今後も様々な取り組みを打ち出していく。企業に義務付けている障害者の法定雇用率は、2021年度から2.3%に引き上げられる(現在は2.2%)。0.1%とはいえ、社員1万人の企業なら新たに10人の障害者を雇用する必要がある。「雇用者の数だけ何とか確保しても、ちゃんとその分の仕事を作れるのか、各部署で管理できるのかと悩む企業もあるでしょう。法律を守ろうという企業が増えてきたのは良いことなので、これからどう質を高めていくかというところです」(福寿氏)。

 複数のグループ企業から成るような大企業は、特例子会社を設立し、その1カ所でグループ企業全体の法定雇用率を満たす障害者を雇用することが認められている。雇用側からすれば、障害者雇用に合った制度を策定したり、働きやすい環境を整備するといった配慮を、各グループ企業に数人ずつ分散させることなく、1社で担えるメリットがある。

 ただし、特例子会社は大企業にのみ認められた制度であり、中小企業は使えない。その結果、障害者に配慮した職場環境の整備や、雇用した障害者に十分な仕事量を確保できないという理由から、中小企業の多くが法定雇用率を満たしていない。

 そこで東京都が2019年末に打ち出したのが、国家戦略特区制度を活用した、中小企業による障害者の共同雇用だ。ローランズのように、障害者雇用のノウハウがあるソーシャルビジネス企業と、資本関係のない中小企業が共同で事業組合(ウィズダイバーシティ有限責任事業組合;LLP)を設立し、組合全体で法定雇用率を算定する。障害者を雇用する役割や、業務を作ったり持ってくる役割など、事業組合の中で役割分担する。ローランズが参加する事業組合が第1号となり、今後東京都で実践したモデルが、全国に広がっていく可能性がある。

 最後に、本連載のタイトルである「100年後をつくるケアと社会」にちなみ、これからの社会に希望することを聞いた。福寿氏はローランズの理念である「誰もが自分色に花咲く社会」の実現を挙げ、「今は当事者が働く場所を作っていて、今後はその場所で、働く幸せが得られていない人と一緒にやっていきたい。そして、こうした社会貢献活動を当事者自身が作るというのをやっていきたい」と話す。「これまでは自分が『社会課題』だったけれど、自分も社会に還元できる、こんなことができるという姿を打ち出して、新たな事業をどんどん創出して特別支援学校の子どもたちを受け入れられれば」(福寿氏)。

 その先にあるのが、障害者の就職の選択肢が増え、現在就労困難と言われる人も、一般の就職活動のように自分の就職先を選んだり夢をかなえられる社会の到来だ。ローランズは、今後5年程度で当事者による社会貢献活動を開始し、理念実現を目指していく。

(タイトル部のImage:Getty Images)