「いつになったら終息するのか」「また緊急事態宣言か」「ワクチン接種はどうなっているんだ」――。世の中には新型コロナウイルス感染症に対して、不満や不安の声であふれています。私は公認心理師(臨床心理士)として働く傍ら地方議員をしていますが、「子どもが外で遊んでいるのはけしからん」「子どもたちが外で遊んでいる声がすると血圧が上がるから何とかしてくれ」など、今まででは考えられないような相談が、地域の方々からも寄せられるようになりました。また、給付金やワクチン接種などが他の地域より遅れていることなど、実態とは異なってはいるのですが、そのような声も聞かれるほどに、皆さんの過敏な声が議員の私たちに寄せられるのです。

 心理の専門家である私は、災害などの大きなストレスへの対応や自衛隊や海上保安庁、消防署などで、ストレスが大きくかかる災害に対応したり日々過酷な訓練や実践で活動していたりする隊員に向けても支援を行っています。この連載では、今だからこそ気をつけなければならない「コロナうつ」を取り上げ、その症状や原因、対策について具体的に説明していきます。

今までのうつとは異なることを理解

 「何となくイライラしている」「今後の生活がどうなっていくのか不安になった」「やる気が起きない」「自分の活躍できる場所はなくなった」――。このようにいつもと違った感情の乱れを感じることはないでしょうか。これこそが知らず知らずに陥っているコロナうつの症状なのです。最近では、再び有名人の自殺報道が聞かれるようになってきており、災害などの緊急事態に対応する心理の専門家としては、「恐れていたことがついに来てしまった」という思いです。

 皆さんが知っておられるうつ病やうつ状態というのは、一般的に頑張りすぎ、いわゆる動きすぎで心のエネルギーが枯渇して起きるバーンアウト型うつをさすことが多く、これは古典的うつと呼ばれることもあります。一方で、ここ数年で増えているコロナうつは、真逆に近い「動かないことによるうつ」なのです。

 新型コロナウィルス感染症のまん延予防対策として実施された、外出の自粛、テレワークの推奨、オンライン授業などの普及では、確かに「ウイルス対策」としては効果的だったのかもしれません。対人接触への不安などは軽減されることでしょう。自宅にいることでお仕事や学業での対人関係ストレスを避けられることや出勤や通学の時間をなくすことができるという表面的ストレス軽減のメリットがあるとも考えられます。しかし、ここにこそ大きなデメリットが存在しているのです。「自宅から出ない」ということこそがコロナうつの大きな要因の一つです。

 外出しないことがもたらす一番のデメリットは、心のエネルギーが生成されないということです。簡単にいうと心のエネルギーというのは、太陽などの強い光を受けて作られるもので、そのエネルギーで元気が維持されるものです。うつ状態と関連が深い脳内の伝達物質であるセロトニンは太陽などの強い光によって生成され、その物質の量や伝達によってやる気などの心の元気が作られるというメカニズムです。

 整理すると、古典的うつやバーンアウト型うつは、動きすぎて生じる「うつ」。一方でコロナうつは、外出不足による太陽光や運動の不足、加えて対人関係から生み出される承認やモチベーションが得られなくなるなど、動かないことによる心のエネルギー生産不足による「うつ」と言えるでしょう。更には動かないことで徐々に体力は落ちていき、免疫力の低下や骨のもろさにもつながっています。コロナうつによって自信の低下や無気力感が強くなり引きこもり状態になるという悪循環に陥るのです。