日本のインターネットの父と称され、「ミスター・インターネット」とも呼ばれる慶応義塾大学の村井純氏。日本のインターネットの技術基盤づくりを先導すると同時に、黎明期から啓蒙活動に関わり続けてきた。現在のインターネット社会の礎を築き、社会変革に寄与してきた同氏は、今後のヘルスケアイノベーションに対してどのような可能性を見出しているのだろうか。

(聞き手は小谷 卓也=Beyond Health)

慶応義塾大学の村井氏(写真:寺田 拓真、以下同)

インターネット社会を構築してきた立場から、今のヘルスケア領域はどのように見えますか。

 インターネットが前提のデジタル社会がつくられていくカギの一つは、デジタルデータ。インターネットというインフラができあがり、Webなどのプラットフォームがつくられて大きく変わったのは、デジタルデータを自由にハンドリングできるようになったことです。コンピュータサイエンスから見れば、大規模なデータ、それを流通させる高速なネットワーク、データを処理するアルゴリズムなどの発展です。大雑把な言い方をすれば、ものすごく巨大なデータを扱えるようになったのが今のデジタル社会です。

 その視点で人間の健康やヘルスケアを考えると、何も変わっていないのではないかと思うことがあります。例えば、我々は生まれたときから、成長のステージそれぞれで身体検査を行っています。それらのデータはどこかにあるのでしょうが、大人になって自身で見ることもできないし、貴重なデータであるにもかかわらず、ほとんど活用されていません。

 こうしたデータが、社会の他のセグメント(業種・業界)とつながっていないことも課題でしょう。人間の健康に関係ない産業なんてありません。そのビジネスモデルができていない、あるいは異業種が参加する体系ができあがっていないことが背景としてあると思います。