医薬開発のノウハウを介護予防に応用

 同社が簡単かつ短時間に歩行を可視化できる技術を開発した背景には、同社の設立母体とこれまでの事業展開がある。

 同社は、医療法人相生会(そうせいかい)の介護部門が独立し、発足した企業だ。1600床・6病院を構える相生会の強みは、30年以上の実績を持つ医薬品開発領域にある。特に、治験の第I相試験*3では国内シェア約40%を持つ最大手で、最近は国内外の8社が開発した新型コロナウイルスワクチンの治験も受託している。

*3 第I相試験:臨床試験のうち、初めて人体に投与する試験。健康な成人ボランティア(通常は男性)を対象として、主に治験薬の安全性と薬物の体内動態について確認する。

 医薬品開発業界の経験を持つ同社代表取締役社長の筒井祐智氏によると、医薬品開発の本質は「名医の“さじかげん”を再現性のあるレシピにすること」。

 「我々は医薬品開発を通して、データを集めてエビデンス化を重ねて、新たな価値をつくっていく医薬開発のノウハウを蓄積してきました。介護事業を展開するに当たっても同じように、科学的な裏付けに基づいて新たな価値を提供することを目指しました」

 介護部門の独立の時期は、2000年に介護保険法が施行され、既に大手の介護事業者が市場を取り込みつつある頃。相生会も、多拠点を運営するのに制限の多い医療法人ではなく、企業として参入することを決めた。その際「大手と同じ土俵ではなく、我々が強みを持つ領域に近く、かつ、彼らがまだ手がけていない領域」(筒井氏)を探し、ニーズの高まっていた“介護予防”に着目した。

 「身体機能の衰えが中~重度だと個別性が強いのですが、軽度の利用者に向けた運動プログラムであればプログラム化しやすい。その領域なら我々の強みを活かせるのではないかと考え、介護予防をテーマに据えることになりました」

 しかし同時に、エビデンスに基づいて再現性のあるサービスを提供していくには、民間企業単独での事業では説得力が足りないのでは、という懸念もあった。よりサービスの付加価値を高めるために研究機関との連携の必要性を感じたことから、ちょうど2003年にスポーツ科学部を設置した早稲田大学と共同で、介護予防のための高齢者向け運動プログラム・用具の開発や医療費・介護費用削減効果の検証、プログラム推進指導者の育成などに取り組む機関「早稲田大学エルダリー・ヘルス研究所」を設立した*4。そして、翌2004年に早稲田EHAを設立し、研究で得られた知見やノウハウを実装・実証するフィールドとして早稲田イーライフを展開するに至る。

*4 早稲田大学エルダリー・ヘルス研究所としての活動は、2018年度で終了。早稲田EHAは現在、同じく学外連携を推進するプロジェクト研究所「早稲田大学アクティヴ・エイジング研究所」と連携している。