【Case 2】「失う痛み」が「得る喜び」を上回る心理を利用

 人は、「無料でもらえる、安く手に入る」ことよりも「自分が持っているものや一度手にしたものを失う」ことを回避する傾向がある。これは行動経済学のプロスペクト理論によるものだ。大腸がん予防では、毎年継続して検診を受けるのが望ましいが、この理論を利用した受診勧奨のお知らせにより、大腸がんリピート検診受診率が7.2%上昇した。

左は利得を強調、右は損失を強調したメッセージ。東京・八王子市の事例では、損失メッセージを受け取った人のほうが受診率が高かった(出所:キャンサースキャン)

 具体的には、大腸がん検診キットを送付後、受診していない人を2グループに分け、一方には「今年度大腸がん検診を受診された方には、来年度『大腸がん検診キット』をご自宅へお送りします」、もう一方には「今年度、大腸がん検診を受診されないと、来年度、ご自宅へ『大腸がん検査キット』をお送りすることができません」と記したお知らせを送付した。その結果、前者の受診率22.7%に対し、後者の受診率は29.9%だった。これは、「今まで無料でもらえていたはずのものがもらえなくなるのは」と思わせることで行動変容を促したケースだ。