介護事業所の管理者らを対象に、現場で必要とされるマネジメント力をVR(仮想現実)技術を駆使しながら学んでもらう──。そんなユニークな取り組みがあるとの情報を聞きつけ、昨年12月に大阪で開催された研修会場に足を運んだ。

 研修の名は、「マネジメント・スタンダード・プログラム for kaigo」。2019年度厚生労働省の補助事業「介護のしごと魅力発信等事業」の採択を受けて、高齢者住宅・施設を運営するシルバーウッド(千葉県浦安市)が実施する。講師を務めるのは代表取締役の下河原忠道氏だ。

 言うまでもなく、介護業界は慢性的な人手不足が続く。どうすれば人材の確保・定着につなげられるのか。下河原氏が出した結論は、「介護現場が魅力的な職場でない限り、今の苦しい状況は決して打破できない」というもの。だからこそ多くの人に「働きたい」と思える環境づくりを進めるために、介護現場の管理者らにマネジメント力をしっかり身につけてもらおうと、この研修を編み出した。

 最大の特徴は、実際に起こり得る介護現場のマネジメント課題をVRで体験できる点。もともとシルバーウッドは認知症の人の世界をVRで体感できるコンテンツを2016年に制作。その後も発達障害やLGBT(性的少数者)当事者の視点に立ったVRコンテンツを作り、全国各地で体験会を実施してきた。

 例えば、VRコンテンツの「レビー小体病 幻視編」は、こんな具合だ。レビー小体病(レビー小体型認知症)は幾つかある認知症の一つで、特徴的な症状として実際には存在しない物が見えてしまう幻視がある。その幻視の世界を忠実に再現した。専用のゴーグルを装着すると、体験者には「知人の家に訪れる人」という目線で様々な幻視が現れる。話している知人の後ろに見知らぬ人が立っていたり、差し出されたケーキの上に虫がはっていたりするのだ。映像は360度に広がり、上を向けば天井、後ろを向けば壁などとあらゆる角度の光景がつながっている。それゆえ、その場に本当にいるような感覚になる。

写真1●レビー小体型認知症の幻視を体験するVRの画面(提供:シルバーウッド、写真4も)