順調な成長を遂げてこられたワケ

 欧米に比べ、日本はバイオベンチャーが育ちにくいといわれる。主たる技術が収益を得られるまでに時間も費用もかかるため、そこまで持ちこたえるのが難しいというのが、その一つの理由だ。そんな中で同社が順調な成長を遂げてこられたのは、独自の発想で開発したバイオ3Dプリンター「レジェノバ」や、それを小型化した「S-PIKE(スパイク)」の販売収益があることが大きい。2019年10月には総合商社の丸紅と提携し、バイオ3Dプリンターの欧米への販売を開始している。

 とはいえ、同社の主軸事業は、あくまで細胞製臓器の製作だ。実際、移植試験が始まった血管の他にも、産学連携で、自然修復が難しい骨軟骨や末梢神経の再生、肝臓構造体の実用化に向けた研究が進んでいる。骨軟骨に関しては患者から取り出した細胞から細胞製骨軟骨構造体を作り、人工関節を使う必要がある変形性膝関節症の治療選択拡大を目指す。

 また、京都大学との共同研究では、病気や事故で末梢神経などを損傷した患者の治療を目的に、患者の細胞から細胞製神経構造体(神経導管)の開発を進めている。神経を損傷した場合の現在の主流の治療法は、患者自身の脚の神経を採取し移植するか、シリコン製の人工神経を損傷部分に移植する方法が主流だ。中でも患者の脚の神経を使う方法では、採取した部分にしびれや痛み、麻痺などが生じるのか課題だった。これに対し、動物試験ではあるが、バイオ3Dプリンターで作った細胞製神経構造体を移植すると、切れた神経が再生し、感覚神経や運動神経の改善が確認されている。来年には細胞製神経構造体をヒトに移植する臨床試験も、スタート予定だという。

 肝臓構造体に関しては、製薬企業が新薬開発を進める際に必要な薬理試験、安全性試験の評価ツールとして活用されつつある。

 こう書くと、バイオ3Dプリンターを使えば、どんな臓器でも細胞から作ることができるのではないかと思えてくる。「モノづくりという意味では大よそどの臓器も作製可能だと思います。ただ、実際に患者さまの体に移植して本当に機能するかは別問題で、これから確認していくことになります」と秋枝氏。

 「将来的には、機能再生が難しいであろう脳などの開発にもチャレンジしてみたいですが、まずは現在開発が進んでいる血管、軟骨、末梢神経、肝臓構造体を着実に実用化させていくこと、そして次のパイプラインの開発を進めていくことを考えています」