介護が必要な高齢者が通い、レクリエーションや入浴、食事提供などのサービスを受けるいわゆるデイサービス。全国に2万3000施設以上が軽度から中度の要介護者の生活を支えている。現在、年間220万人以上がデイサービスを利用すると言われているが、自分で通える利用者はごくわずか。職員が施設の車両で送り迎えをする。この送迎車を使ったビジネスの実証テスト(2020年4月~2021年3月)が注目されている。開発者であるソーシャルアクション機構代表理事の北嶋史誉氏に聞いた。

ソーシャルアクション機構代表理事の北嶋史誉氏(写真:末並 俊司)

 群馬県高崎市にお住まいの吉田茂之さん(79歳仮名)は、一昨年の春に運転免許証を返納した。生活の足を失うことに不安はあったが、「福祉MOVERのおかげで買い物や通院に困ることはない」と笑顔だ。

 吉田さん慣れた手付きでスマートフォンで福祉MOVERのアプリを立ち上げ、ササッと数回タップした。

 「これで完了です。(スマホに表示された地図を見ながら)あと7分ほどで家の前まで車が来てくれるんですよ。いわばスマホを使った遠隔のヒッチハイクですね」(吉田さん)

 吉田さんが“ヒッチハイク”したのは近所のデイサービスの送迎車だ。しかし吉田さん自身はそのデイサービスの利用者ではない。

 福祉MOVERを運営するソーシャルアクション機構代表理事の北嶋史誉氏はこう説明する。

 「デイサービスと送迎業務は切っても切れない関係です。送迎があるからこそ、デイサービスが成り立っているとも言える。簡単にいうと、事業所ごとに張り巡らされた送迎ルートを使った相乗りサービスが『福祉MOVER』なのです」

 朝、デイサービスのスタッフは、各利用者の自宅に送迎車で迎えに行く。同じ方向に住んでいる複数人をピックアップし、事業所まで連れてくる。そして日中サービスを受けた利用者を、再び送迎車で自宅まで送り帰す。これが送迎の業務だ。専門のドライバーを用意している事業所もあるが、多くは介護スタッフがハンドルを握る。

 「送迎の途中に『買い物したいからスーパーの前で降ろしてよ』といった注文をしてくるご利用者さんもいます。ただ、それは介護保険サービスの仕組み上できないことになっています。説明するのだけど、納得してくれない方もなかにはいらっしゃる。『せっかくすぐ近くを通るんだからそのくらいいいでしょ』という思いですね。その気持はよくわかります」(北嶋氏)