「使い方によって、この極薄の膜にさまざまな価値が生まれる」

 花王は、ファインファイバー膜の機能に関して試験を実施している(2019年9月4日のニュースリリース)。[A]従来の製剤のみ、[B]ファインファイバー膜のみ、[C]ファインファイバー膜と製剤を併用した膜の3種類のサンプルを用意し、透湿度(膜が水蒸気を通す度合い)を比較したところ、透湿度が高い順に[A][B][C]となることが確認できた。この結果について同社は、[A]には微細な隙間が存在し、[B]にも繊維間に隙間があるため、透湿度のレベルは大差ないとみる。それに対して[C]では、ファインファイバー膜が持つ毛管力によって製剤が広がり、隙間が埋められるため、透湿度が低下。加えて膜が密着し、水分蒸散を抑える効果が持続すると分析している。さらに同社は検討を重ね、ファインファイバー膜に組み合わせる製剤の組成によって透湿度の制御が可能であることも確かめたという。

 併せて同社は、水分の蒸散を制御する製剤を用いた場合と、この製剤とファインファイバー膜を併用した場合での連用試験も行った。これにより、製剤にファインファイバー膜を組み合わせて使うと、肌を良好な状態に導くとされる複数のタンパク質が角層内で短期間に発現することや、乾燥した肌の見た目が早期に改善することも確認できたとしている。

 これらの結果から同社は、Fine Fiber Technologyを目的に合った製剤と組み合わせて提供することで、さまざまな分野での展開が可能とみている。具体的には、あざや傷跡を隠すカバーメイクやケミカルピーリング後のケア、皮膚損傷の治療などの使い道が考えられる。「使い方によって、この極薄の膜にさまざまな価値が生まれる」と研究開発部門 研究戦略・企画部 部長の前田晃嗣氏は、同技術が持つ可能性に期待を込める(写真2)。

写真2●花王 研究開発部門 研究戦略・企画部 部長の前田晃嗣氏

 そのために同社は、ポリマーや溶媒、ファインファイバー膜と共に使う製剤、装置の仕様といった各要素を用途に合わせて検討していく計画だ。

 「例えばボディーメイクの場合は、肌への密着性をより高める製剤が必要かもしれません。他の用途では、装置の仕様を変更する可能性もあります。目的に合わせたさまざまな提案が可能なのです」

 「ファインファイバー膜によって実現すべき湿潤環境が、用途によって変わってくる」と東城氏。

 「医療分野での使用を考えたとき、肌の状態が健常な人と疾患を抱える人では適した環境が異なるはずです。検討を重ねることで、それぞれの環境を保つためのポリマーや溶媒、製剤といった要素の最適な組み合わせが見出せると考えています」