健常者の子どもを交えた「ワンチーム」で開発

 アプリの開発に当たり、Ubdobeでは当事者であるリハビリが必要な子どもたち、そして健常者の子どもたちが一体となって開発する枠組みを整えた。これにはUbdobeの代表理事であり、デジリハの発案者の1人である岡勇樹氏の「偏見のない社会は、健常者と障がい者がお互いをよく知ることから始まる」という考え方が反映されている。

 健常者の子どもたちは「デジリハLAB(デジリハラボ)」というUbdobeが運営する枠組みを通じて、アプリの企画・設計に参加する。デジリハLABにメンバーとして参加する子どもたちは、「キッズクリエイター」と呼ぶ。

 例えば、現在11種類あるアプリの1つ、「ブンブンうさぎボート」は、リハビリに取り組んでいるある子どもを対象に開発した。「キッズクリエイターがリハビリを必要とするお子さんにヒアリングしながらアプリのアイデアを出していった」(仲村氏)。ブンブンうさぎボートは画面の上から降ってくる物体をキャッチするゲームアプリ。降ってくる物体のデザインには、そのリハビリが必要な子どもの意見を反映させた。その子どもが特に好きな食べ物(焼きとり)をキャッチできると、ほかの物体よりも高いポイントが得られる。

アプリ「ブンブンうさぎボート」の画面例。身体をひねってうさぎを左右に動かし、上から落ちてくる物体をキャッチする(出所:Ubdobe)

 アプリにリハビリとしての機能性を持たせながら実装するのは大人の役割だ。デジリハの開発チームには理学療法士や作業療法士などの国家資格保有者が加わっている。「リハビリを知る専門職が関わり、『リハビリの現場でどう使えるか、子どもたちにどういう配慮が必要か』といった観点で議論をしながら実装している」(仲村氏)。

試験を重ねてより効果的なアプリを目指す

 厚生労働省の資料によれば、2018年時点で、19歳以下の小児慢性特定疾患患者数は11万人以上いる(出所:厚生労働省「平成30年難病対策及び小児慢性特定疾患対策の現状について」)。先にも触れたように、リハビリは子どもたちの生活能力の確保には欠かせない活動だが、決して楽なものではない。

 そのため、エンターテインメント性を持たせたデジリハには期待の声が寄せられている。2017年からの開発期間中にも、試験利用をしているユーザーから様々なフィードバックがあったという。

 試験利用ユーザーの1人、作業療法士の工藤隆一氏(ユディパース取締役副社長)に話を聞くことができた。「デジリハを設置すると、子どもたちが勝手に寄ってきてくれる」と工藤氏は語る。

 工藤氏は作業療法士として約9年のキャリアを持ち、子どもの発達支援や放課後等デイサービスなどを手がける施設「ステップアップスペース なっつ」(千葉県柏市)の経営にも携わっている。子どもの発達支援に使えるツールを探し求める中でデジリハのことを知り、現場で試験利用を重ねてきた。

 プロジェクターでデジリハのアプリの画面を投影すると、「何これ?」と子どもたちが自然と寄ってきて、「やってみたい」とアプリで遊ぶ流れになりやすいという。「デジリハは子どもの興味を引きつけやすい。子どもにとっても、また作業療法士としてもストレスがなく、非常に有り難い」(工藤氏)。

 デジリハを試験利用する中で、リハビリ的な効果と思われる兆候が観察できたという。工藤氏が一例として紹介するのが、視線の動きを検知するセンサーを使ったゲームアプリの「視線でバキュン!」だ。

 発達障害を持つ子どもには眼球運動を苦手とするケースがある。そのような子どもには、「ビジョントレーニング」と呼ばれる目で対象物を見る力を養うトレーニングが、運動や勉強など日常活動の質を高めていくうえで重要である。

 「適切なビジョントレーニングを実施するには、首の動きを固定するといった工夫が必要。一方、このデジリハのアプリでは、画面上にポインターが目線に対応して表示され、きちんとした眼球運動が促されやすい。確証的なことはまだ言えないが、これまで現場で使ってきた印象としては、(リハビリツールとしての有効性について)確かな感触を得ている」(工藤氏)。工藤氏は自身の経験も踏まえて、Ubdobeと業務委託契約を結び、今後は法人向けのデジリハの導入支援にも携わっていくという。

 Ubdobeではデジリハのリハビリ効果について学術的な検証を進めている。1つが筋ジストロフィーを持つ子どもへの適用効果の検証である。スポーツ科学の研究を行っている順天堂大学発育発達学・測定評価学研究室の鈴木宏哉氏(先任准教授)の助言を得ながら、デジリハが筋ジストロフィーを持つ子どもの可動域にどのような変化を及ぼすか検証していくという。また、先に工藤氏が挙げたような発達障害の子どもへの適用効果について、効果を実感している作業療法士らがほかにもいるという。あるグループでは大学病院の支援を受けながらデジリハのより効果的な適用方法の検討を進めているとする。