安否確認、居室での在・不在の確認、フロアでの出入りの確認…。介護現場での「人感センサー」の導入はもはや当たり前のものとなりつつある。様々なセンサー機器は介護スタッフの目となり、その仕事を補完する。家電大手のパナソニックと介護業界大手のHITOWAケアサービスが手を結ぶことで、新たな『目』が生まれようとしている。

 言わずもがなではあるが、少子高齢が進み、介護を必要とする人口はしばらく右肩上がりが続く。一方、介護を担う側の人材は伸び悩んでいるのが現状だ。このギャップが広がることでまず懸念されるのが、事故の増加だ。

 介護現場は生活の場でもある。そこから事故を完全に締め出してしまうことは不可能だ。実際、車椅子やベッドからの落下や転倒などは日常的に発生している。

人身事故状況分類(出所:「介護サービスの利用に係る事故の防止に関する調査研究事業 報告書」から)

 介護労働安定センターによる調査「介護サービスの利用に係る事故の防止に関する調査研究事業 報告書(平成30年3月公表)」を見ると、事故の実態が見えてくる。老人ホームなどの「入所サービス」での人身事故を分類したもののトップは「転倒・転落・滑落」だ。全体の8割を超える。

「見守り中の事故」という不思議

 注目したいのは、介助者が「ちょっと目を離した」時に起こる事故だ。「他の利用者を介助中」「見守り中」「目を離した隙」の3項目がそれに該当しそうだ。合計すると全体の36.8%を占める。

転倒・転落事故が発生した際の業務詳細分類(出所:「介護サービスの利用に係る事故の防止に関する調査研究事業 報告書」から)

 中でも不思議なのが「見守り中」の事故が、12.9%にものぼることだ。「見守っている」にも関わらず、どうしてこのような数字になってしまうのか。介護事業所で長く経験を積み、現在は事業所の運営にも携わる介護評論家の田中健氏は次のように語る。

 「介助のレベルにもいろいろとあるのですが、日常の生活動作にさほど問題がない方の場合、『見守り対応』が適用されます。着替えや移動など、過度に介助せずご自身でやっていただく、ただ危険がないように見てはいますよ、という対応ですね。

 しかしそうした場合でも、昨日まではできていたのに今日はできない、ということがままあります。昨日までは車椅子からの立ち上がりができていた。だから今日も昨日と同じように見守り対応、なのだけど、その日はたまたま体調が優れず、車椅子から立ち上がった途端に転倒してしまった。見守り中の事故と言われると不思議な感じもするのですが、こうしたことは日常的に起こっています」

 そうした介護現場にあって、テクノロジーの力を借り、見守りの精度をこれまでとは全く違った次元に持っていこうと考えているのがHITOWAケアサービスとパナソニックのタッグチームだ。

HITOWAケアサービス事業企画室次長の丸山具視氏(写真:末並 俊司、以下同)

 HITOWAケアサービス事業企画室次長の丸山具視氏はこう話す。

 「介護の現場では人手不足など、多くの問題を抱えています。現状ではギリギリ運営できていたとしても、5年後10年後に同じようにやれているか、と考えると不安が拭えない。ただ、新たなテクノロジーの力を導入することで解決できる事柄が少なくありません。テクノロジーと介護の融合について、社内では2年ほど前から議論をはじめました。そのなかで、パナソニックさんという強力な相棒にも出会えることができました。介護現場での大きな変革となりうる下地が整ってきています」