生活習慣の改善・疾患予防も個別化へ

 そもそもゲノムとは、ある生物を構成する全遺伝子情報のことである。ヒトの場合は30億の塩基対でできている。2003年にヒトゲノムが解読されて以来、これまでにさまざまなことが分かってきた。

 例えば、ヒトとチンパンジーのDNAの違いはわずか1%で、ヒト同士のDNAの差は全体の約0.1%とされている。つまり1000個に1個の割合で塩基が違うことによって、顔貌や性格、疾患リスクなどの遺伝的個性に違いが生まれている。ジーンクエストなどが提供するゲノム解析サービスでは、その違いを解読しているというわけだ。

 DNAと遺伝子の違いは、DNAがデオキシリボ核酸という物質であるのに対し、遺伝子はDNAが構成する情報のことを指している。これは、「DNAがCDなら遺伝子は録音されている音楽のことで、DNAが本なら遺伝子は中に書かれているストーリーのこと」と高橋氏は説明する。ゲノム解析サービスでは、DNAを解析することによって遺伝子情報を読み込んでいる。

DNAと遺伝子の違い

 こうした遺伝子情報を解析することで、(1)オーダーメイド医療の実現、(2)疾患リスクの回避、(3)個人の適正を知る、といった応用が考えられる。(1)のオーダーメイド医療は、既にがんの治療で始まっているが、「今後はがん以外の疾患や、睡眠・食事・栄養といった生活習慣の個別化サービスにも波及するだろう」と高橋氏は見る。

 (2)の疾患リスクの回避は、リスクを知ったうえで正しい健康づくりをすることで、発症を予防することである。ジーンクエストのサービスでも、リスクを下げるための生活習慣をアドバイスしているという。

ジーンクエストが提供する個人向けゲノム解析サービスの結果画面の例。リスクの高い疾患の詳細とその予防策が記載されている

 (3)の適正とは、例えば、スポーツをする場合に、瞬発系の種目が適しているのか持久系の種目が適しているのかなどを知ることができる可能性のこと。ただ、この領域についてはまだ十分に研究が進んでおらず、今後エビデンスを構築する必要があるとした。

 一方、遺伝子情報を知ることで、結果自体が精神的負担になったり、差別を助長したりする恐れもある。例えば、精神疾患になりやすいという結果は、その情報自体がストレスとなる可能性があるため、結果を通知する際にはカウンセリング体制を整える必要があるという。差別への対策としては、米国では過去に、企業の採用試験や保険の加入時に遺伝子情報の提出が求められた事例があり、遺伝子差別を禁止する法律を10年以上前から整備している。