日本初の人工衛星「おおすみ」の打ち上げから50年、アメリカ航空宇宙局(NASA)の「ハッブル宇宙望遠鏡」の打ち上げから30年に当たる2020年は、宇宙開発・利用において大きな出来事が続いた。5月21日、日本の宇宙ステーション補給機「こうのとり」の9号機が打ち上げられ、11年にわたる国際宇宙ステーション(ISS)への補給ミッションを完了した1)。同月31日には、米Space Exploration Technologies(スペースX)が開発した有人宇宙船「クルードラゴン」(Crew Dragon)の有人試験飛行が成功2)。11月16日には、クルードラゴンの運用初号機「Crew-1」が打ち上げられ、JAXAの宇宙飛行士である野口聡一氏らをISSに送り届けた3)。そして12月6日、小惑星「リュウグウ」でサンプルを採取したJAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」が地球に帰還し、サンプルの入ったカプセルを分離4)。次なる目的地である「1998KY26」へと旅立つ姿を、ライブ中継を通して地上の人々が見守った。

1)2020年8月20日付、JAXAの報道発表
2)2020年8月3日付、JAXAの広報資料
3)2020年11月16日付、JAXAの報道発表
4)2020年12月6日付、JAXAの報道発表

はやぶさ2の勇姿を他の場所から見た人たちもいた。相対距離にして1万2000km離れたISSで業務に当たる宇宙飛行士(以下、クルー)だ5)。野口氏は「地球に向けて高度をぐんぐん下げてくる光を約5分見つめてました」とツイッターに投稿している。無人探査機と同じく、地球から遠く離れた場所で任務を遂行するISSのクルー。地上の我々が抱く以上の敬意を持って、その光を見ていたのかもしれない。

5)JAXA「【大気圏再突入直前!】ISSからはやぶさ2と再突入カプセルを狙ってみた!」

実は、2020年はISSでの長期滞在開始から20年という節目の年でもあった。数々の無人探査機と同様、有人実験施設としてISSが果たしてきた役割は大きい。

健康管理でクルーのパフォーマンスを向上

 ISSは、15カ国が協力して地上から約400km上空に建設した実験施設6)(図1)。地球のまわりを1週約90分の速度で周回する施設の広さは約108.5m×約72.8mで、サッカーのピッチとほぼ同じ。4棟の実験モジュールを備え、長期滞在する3~6人のクルーが施設の保守・整備や宇宙環境での科学実験などに携わる。

6)JAXA「ISSとは」

図1●国際宇宙ステーション(ISS)
図1●国際宇宙ステーション(ISS)
2010年5月24日、分離後のアトランティス号から撮影された様子(出所:JAXA/NASA)
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 実験モジュールのうちの1棟が、JAXAが運用する「きぼう」日本実験棟だ(図2)。2008年に利用が始まったきぼうでは、「微小重力」「宇宙放射線」「広大な視野」「高真空」「豊富な太陽エネルギー」といった地上とは異なる環境を生かした実験を実施している。そのテーマは、実施中のものだけでも「微小重力の環境で老化が加速するメカニズム」「微小重力環境を活用した臓器創出を目指す三次元培養技術の開発」「高品質タンパク質結晶生成実験」「高エネルギー電子、ガンマ線観測装置」「全天にわたるX線天体の長期・短期変動の研究」などさまざま。これまでに基礎物理から医学、生物学、基礎技術の検証と、幅広い分野の研究に貢献してきた。

図2●「きぼう」日本実験棟
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図2●「きぼう」日本実験棟
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図2●「きぼう」日本実験棟
2011年5月30日に分離後のエンデバー号から撮影された「きぼう」(左)と、船内の様子(右)(出所:JAXA/NASA)

 こうした数多くの実験の成功率や精度を高めつつ、高効率に実施していくには、地上スタッフとクルーの連携が欠かせない。クルーが最高のパフォーマンスで実験に当たれるように、事前のトレーニングや手順書の作成、実験装置のチェックから、実験データの監視、非常時の対応まで、質の高い作業支援が求められる。

 クルーのパフォーマンスを向上させるために忘れてはならない要素は他にもある。それは、健康だ。地上とはまったく異なる、いわば“極限環境”の中、健康状態が良好でなければ集中力を高めて正確に作業をこなすのは難しい。地上から彼らの健康状態をモニタリングし、常に良い状態に保つ手助けするのも、地上スタッフの重要な役割となる。