人生100時代といわれる昨今。平均寿命が伸びて老後が長くなった。現役を引退しても、そこからひと花もふた花も咲かせることができる。そんな思いを秘めている高齢者のために看護師を辞め、シニア専門の芸能プロダクションを立ち上げた人がいる。

 「おじいさんおばあさんを元気にする。そんな単純な気持ちだったんです。それは今もかわっていません」

 シニア専門の芸能プロダクション・アンコールプロダクション(大阪府)の代表平岡史衣氏はそういってカラカラと笑う。

 関西の大学を卒業し、大病院の看護師として2年間勤務した。そこで平岡氏は看護と患者の、超えがたい壁を感じたという。

 「私が配属されたのは、形成外科の急性期病棟でした。高齢者の方と接する機会が多く、病気や退院後の生活などについてお話しすることもありました。そんななかでよく耳にしたのが、『骨折が治って自宅に帰ってもやることがない』とか『ケガや病気は治っても、体力は元通りにはなっていない。退院後の生活に自信がない』といった不安の声でした」(平岡氏)

 「いっそのこと死んでしまいたい」──なかにはそんな言葉を口にする高齢者もいた。

 「医療は病気やケガを治すことは得意だけど、その後の生活については無力だと感じました。もともと子供の頃はおじいちゃん、おばあちゃんっ子だったし、ナースになりたてのころにもお年寄りたちのあたたかさに救われたという経験がありました。そんな人たちの人生をもう一度輝かせるお手伝いがしたい。そういう思いがシニア専門の芸能プロダクションの立ち上げにつながったのです」(平岡氏)

看護師グループ主催の介護予防イベントでのひとこま。右が平岡史衣氏(提供:平岡氏)

 2019年にプロダクションの立ち上げにこぎつけ、現在所属タレントは50人。年齢は65歳から90歳と幅広い。

 「芸能プロダクションとうたってはいるのですが、これまでの人生で身につけてきたいろいろな特技や知識を自由に発揮していただきたいと思っています。芸能とはちょっと違った中学校や高校の課外授業で、戦争体験を語っていただくといったお仕事もあります」(平岡氏)