「走る歓び」を追求する自動車メーカー、マツダ。単にクルマの走行性能だけなく、運転することが自信と誇りにつながり、新たな挑戦へと向かう活力となる。これがマツダの考える走る歓びの意味だ。こうした想いを実現するため、積み上げてきた技術の先には、歓びを妨げる認知症という壁を突破するヒントが隠されていた。

 運転を続けることで認知症のリスクは低減する──

 マツダはそう主張する。実際にこれを裏付ける調査もある。筑波大学が行った運転と要介護認定の関係をめぐる調査では、運転をやめた人は、続ける人に比べて要介護となるリスクが2倍以上になるという結果が出た

 マツダの商品戦略本部 技術企画部主査・栃岡孝宏さんが解説する。

マツダ 商品戦略本部 技術企画部主査の栃岡孝宏さん(写真提供:マツダ)
マツダ 商品戦略本部 技術企画部主査の栃岡孝宏さん(写真提供:マツダ)
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 「この調査で明らかになったのは、“移動”がいかに人間の活力に影響を与えるかということです。運転をやめた人でも、バスや電車などの公共交通を利用し続けた人では、要介護となるリスクは1.7倍程度に抑えられているのです」(以下「」内はすべて栃岡さん)

 同調査を細かく見ると次のようになる。

 運転をやめても移動のために公共交通機関や自転車などを使っている人であれば要介護となるリスクは1.69倍にとどまっている。ところが運転をやめ、かつ移動を同居家族の運転する車などに頼っている人だとそのリスクは2.16倍にまでなったというのだ。

 移動範囲を広げるために車を運転する。または自分の意思により積極的に公共交通機関を利用して移動する。そうしたことがいかに要介護リスクを遠ざけるかが見て取れる結果だ。

 「移動のために車を運転する。この行為は手、足、頭、体を様々に使いながら判断し操作するということです。それらの行為を歩いているときよりずっと活発に行っている。思いのままに車を操縦できたということが“報酬”となり、もう一度実施してみたくなるというサイクルが生まれる。運転する、報酬を得て、そしてそれをもう一度実践するというサイクルを回しながら、どんどん元気になってくる。そうした“走る歓び”をサポートするために、マツダの安全技術があるのです」

 運転を続けることで認知症のリスクは低減する──

 この言葉の意味するところが、おぼろげながら見えてきた。