「地域の幸せ」を見出す指標とは

 セッションの後半は、スマートシティ・インスティテュートが検討を進めている「Liveabe Well-Being City(リバブル・ウェルビーイング・シティ)指標」を含め、幸福なまちづくりの指標の在り方について議論が進められた。南雲氏はウェルビーイングなスマートシティの指標の在り方として、「人間中心主義」「市民参加」「世界的な枠組みとの整合的な枠組み」といった方向性を示し、「適切な範囲で見たときの地域にはそれぞれ個性がある。均質化するのではなく個性を我がまちの魅力として、互いの良さを認めて学び合える道具としてつかってもらえるような指標が必要だ」と概観した。

(セッションにおける南雲氏の発表資料より)
(セッションにおける南雲氏の発表資料より)
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 スマートシティ・インスティテュートと連携して幸せなまちの在り方のKPI化を検討している関氏は、「ポジティブな市民が増えると、行政側もチャレンジがしやすくなり、おそらくイノベーションも進んでいく」と、市民参加につながる指標づくりの重要性を強調した。

 前野氏は、「便利な街」と「幸せ」は、意外と直接的にはつながってこないのではないかと指摘。そこで、「幸せ」の意味をもう少し分解し、「向社会行動」「社会関係資本」「やりがい」といった幸せに寄与する中間的なパラメーターを設定することを提言した。前野教授は「『自ら地域社会のために何かチャレンジすることができる』という幸福度の因子と、『地域にコミュニティセンターがある』ということには、正の相関を持つ可能性が高い」といった例を挙げながら中間因子の必要性を示唆した。

 内田氏は「個人と社会(ミクロとマクロ)の問題が重要になる」と語る。「ある人たちだけは幸せで、別のある人たちはそうではない」といったまちの状況があっても、そのことは「個人としての幸せ」の平均値から読み取ることはできない。内田氏は、指標づくりに際しては「お互いに幸せが伝播するようなマクロ状態とは、どのような状態なのかを考えなくてはいけない」と指摘した。ただし、そうしたマクロな状態の指標が規範となることで、「そうしなくていけない」という形で個人の行動を縛る形になってしまうのもよくないと補足した。

 また、調査に適正な規模について問われた内田氏は、「100世帯くらい集落、いわば『自治会』の規模だと、地域に参加していることが意識されやすい。市町村合併で大きな市になった自治体は、隣接する旧市町村間でコミュニティの性質がまったく異なるケースもある」と指摘。続けて、「(まちの幸せに関する調査は)行政区で単純にくくらずにやや小さい区分で見た方が、そこで暮らしている個人の感覚にはフィットしやすいと思う」(内田氏)とコメントした。

 セッションではそのほか、国際的な指標では市民の宗教や自然環境に対する考え方や、政治参加の度合いも幸福度の要因として含まれること、それらの因子に関する日本と諸外国との受け止め方の違いなどに関する意見も交わされた。

(タイトル部のImage:patpitchaya -stock.adobe.com)


出典:「新・公民連携最前線」2021年2月26日付の記事より