形態や運動性に優れた精子の判別から、抽出までを自動化する「自動精子選別装置」が間もなく登場する。開発しているのは、医療機器系スタートアップの日本医療機器開発機構(JOMDD)と国際医療福祉大学および東京大学の共同研究チームである(関連記事:良好な「精子」を自動選別、装置開発に向けタッグ)。現在は、「2020年中の国内での上市を目指している」(JOMDD 事業開発マネージャーの久保慶治氏)段階だ。

AIを用いた精子選別のイメージ(出所:JOMDD)

課題は知識や技量、経験などによる「ばらつき」

 主に男性側に原因があって妊娠に至らない男性不妊症は、不妊原因の40数%に及ぶと言われている。2016年に公表された厚生労働省の全国調査によると、男性不妊症の原因の約8割が造精機能障害である。

 造精機能障害とは、射精した精液中に精子が存在しない無精子症、精子の数が極端に少ない乏精子症、精子の運動性が悪い精子無力症、奇形の精子が多い精子奇形症などを指す。こうした障害を有する男性の精子を受精させるためには、形態や運動性が良好な精子を選別することが非常に重要になるという。

 良好な精子を見極めて選別する作業は、胚培養士が担っている。現状は顕微鏡下で目視と手作業で行われており、胚培養士の知識や技量、経験などに依存している部分が大きい。「選別した精子で受精卵ができる確率は3~4割程度とされているが、生殖医療施設によってばらつきがある。特に胚培養士の熟練度、あるいは何人の胚培養士が選別処理するのかで変わってくる」。国際医療福祉大学医学部 高度生殖医療リサーチセンター長の河村和弘氏はこう課題を指摘する。

 無精子症の場合は、精巣の組織から直接、精子を採取する「精巣内精子採取術(TESE)」と呼ばれる手術を実施する。ところが、精巣内から精子を採取しようとすると、多くの精細管組織も一緒に採取されるため、その中から良好な精子を見つけ出すのは大変な苦労を伴うという。河村氏は「大海原で漂流している人を見つけるような作業」と表現する。ともすると「10時間も顕微鏡を見続けることになることもある」(同氏)。

国際医療福祉大学の河村氏(写真:加藤 康)

 そうした河村氏の過去の経験を通して、体外受精に使える良好な精子の選別を胚培養士の熟練度に左右されず、かつ効率的に抽出できないか――。その思いが今回の装置開発につながった。