類似の他の研究との大きな違いは…

 開発中の自動精子選別装置は、人工知能(機械学習)を用いて精子の形態や運動性を解析し良好な精子を判別するプログラムと、良好と判断された精子を自動で抽出する装置から成る。日本医療研究開発機構(AMED)の2017年度「成育疾患克服等総合研究事業―BIRTHDAY」に採択され、研究を続けてきた成果がベースになっている。

 良好な精子を判別するプログラムは、熟練の胚培養士が判定した良好な精子像を教師データとして、ディープラーニングを組み合わせて機械学習させることでアルゴリズムを構築している。教師データは、国内の生殖医療機関の協力により、現時点では胚培養士が選別した約100人分の精子動画から切り出して使用している。

 実は、「現在の機械学習による画像認識技術では、熟練した胚培養士の判定データがあれば、良好な精子の判別自体はそれほど難しいことではない」(東京大学 大学院情報理工学系研究科 システム情報学専攻 生体医用マイクロシステム講座 講師の池内真志氏)という。実際、人工知能で良好精子を判別するシステムの開発は、他の研究チームでも行われている。

図●自動精子選別装置のコンセプト(出所:JOMDDの資料を基にBeyond Healthが作成)

 これに対して今回の装置のポイントは、良好な精子の判別と同時に、その精子のみをリアルタイムに選別・抽出する技術を確立したことにある(図)。選別・抽出には、池内氏が研究テーマとする生体医用マイクロナノマシンの技術を生かした。「5μ~10μmほどの微小な精子1つを、精子自体に負荷をかけることなく吸い取ることが可能なマイクロバルブというデバイスを開発。このマイクロバルブを多数配置することで、精子を判別すると同時に素早く効率的に自動抽出できるようにした」(同氏)。

東京大学の池内氏(写真:加藤 康)