最終的なゴールは…

 今回の装置は、「TESE術者・胚培養士の技量に依存しないTESE治療の標準化にも貢献できる」と河村氏は言う。TESEは、部分麻酔により通常30分~1時間ほどの手術で精子を含む可能性のある精巣の精細管組織の採取を終え、その後に時間をかけて胚培養士が精子を見つけだしていた。

 「精巣のどの場所で採取すれば精子が見つかるかは、術者の知見と経験に頼っていたところがある。(採取しようとする組織に)精子がいるかどうかAIで瞬時に判断し、術中にリアルタイムに精子を採取できれば、精子を見つけられるまで可能な範囲で手術を続行でき、採取確率も上がるだろう」(河村氏)。

 河村氏らは、今回の装置はあくまで最終的なゴールへの入り口だと位置付ける。目指しているのは、実際に選別した精子による受精卵の作成から、妊娠・出産、さらに子どもが発育していくまでを追跡し、選別した精子が良質だったことを根拠づけることだという。

 「AIが選別した精子が本当に良好なものなのかは、受精させた卵子による妊娠・出産・発育まで追跡する必要がある。そうしたデータを収集できれば、より信頼性の高い教師データが集積できる」と河村氏。子どもの成長までを見据えた良好な精子選別を目指し、自動精子選別装置の研究開発をさらに発展させていきたいと展望した。


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