「勝つマージャン」ではなく「楽しむマージャン」を教える
健康マージャンの看板を挙げる教室はここばかりではない。ところが別の教室に通ったことがあるという70歳代の方は「ここ以外では長続きしなかったんですよ」という。チアリーが運営するみんなの麻雀は他の教室と何が違うのか。川島氏はこう説明する。
「弊社は長年培った『高齢者に理解してもらうノウハウ』があります。例えば質問に対してすぐに答えを出すのではなく、一緒に考えてもらう。さらに一般的なマージャン教室は勝つための方法を教えることが一般的なのですが、ここでは『楽しむための方法』をお伝えすることを心がけています」
楽しむマージャンの大きな要素が「マナーの徹底」だ。前述のように、ゲーム前の挨拶から始まり「牌を卓に叩きつける」「相手のアガりに対する批判」などの行為はご法度だ。「卓に肘をつく」のもマナー違反として指摘される。
今村さんは「最初は面倒だなって思ったけど、今は全面的に賛成だね」と語る。
「仲間内と打つときは、アガるとき気持ちに勢いをつけるために牌を卓に叩きつけたりしてたけど、あれって他人にやられるとけっこうカチンと来るんだよね。だからは今はやらない」(今村さん)
高齢化の伸展により介護ビジネスも多様化している。レクリエーションにマージャンを取り入れる高齢者施設も出始めている。マージャンというゲームが、コミュニケーションの活性化や脳活のために有意義であることがわかっているからこそ、そうした動きにもつながっているわけだ。ただ、パソコンやプログラミング、英会話教育で実績のある「教育集団」が教える例は過去にはなかった。
「マージャン教室をやっているだけでは、高齢者の生活が豊かになるわけではありません。ただ、ここが地域になくてはならない『居場所』になってくれればと考えています」
マージャンは、興味はあるけど難しそう。と未経験者からは敬遠されがちなゲームだが、「大丈夫、経験のまったくない人でも2回ほど通っていただければある程度楽しめるようになります」と今村さんは胸をたたく。逆に言うと「難しいからこそ楽しいし、脳活になる」(講師の井上氏)わけだ。
タバコやアルコールの匂いのない、明るく健康的な空間で賭けないマージャンを楽しむ。
前出80歳の懸さんはこういう。「マージャンだけだったらテレビゲームでもいいと思いますよ。私も家にいるときはやることがあります。でもね、面白くないの。やっぱりでかけて行って人間としゃべりながら打たないとだめ。マージャンにはそういう力があるんですよ」。
教育サービス企業とマージャン教室。ちょっと不思議な取り合わせだが、新たな高齢者ビジネスのヒントが隠れていそうだ。
記事初出時、「今村英夫氏」とあったのは「今村秀夫氏」でした。お詫びして訂正します。記事は修正済みです。
(タイトル部のImage:末並 俊司)