静岡県裾野市、静岡大学サステナビリティセンター、静岡大学情報学部、静岡県弁護士会は2021年2月28日、先端学術シンポジウム「裾野市の未来とスマートシティ-AIと法の観点から-」を共催した(後援は静岡県)。当日は、リモート会議ツールのZoomを使用した遠隔形式で開催され、静岡県第1区選出の上川陽子衆議院議員・法務大臣の録画挨拶に続いて、裾野市の高村謙二市長が登壇。「スソノ・デジタル・クリエイティブ・シティ(SDCC)が拓く未来社会」と題して、SDCC構想の概要やスマートシティの実現に向けて進行中の取り組みを報告した。

裾野市の髙村謙二市長(シンポジウムのオンライン画面より)
裾野市の髙村謙二市長(シンポジウムのオンライン画面より)
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 スソノ・デジタル・クリエイティブ・シティ構想(SDCC構想)は、裾野市が2020年3月に発表した次世代型近未来都市構想。トヨタ自動車が2020年1月に発表した「Woven City(ウーブン・シティ)」構想を受けて、豊かな自然と調和する次世代型近未来都市の構築を目指している。Woven Cityは2020年末に閉鎖されたトヨタ自動車東日本東富士工場跡地建設される。2021年2月23日に着工(関連発表)した。

 基本的にはSDCCとWoven Cityは別のプロジェクトであるが、裾野市は両者の連携を目指している。そして、Woven Cityの実現に「最大限の支援を行う」(高村市長)ことを表明。2020年12月には東富士工場跡地の用途地域を工業専用地域から準工業地域に変更し、研究開発拠点としての位置付けを行っている。

トヨタ自動車東日本の東富士工場跡地と用途地域変更(出所:シンポジウムでの高村市長のプレゼン資料)
トヨタ自動車東日本の東富士工場跡地と用途地域変更(出所:シンポジウムでの高村市長のプレゼン資料)
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 2021年2月23日に着工(トヨタの発表資料)した「Woven City」の周辺では、職住近接の新規分譲住宅約100区画の建設にも着手。2020年8月に着工して、2021年1月25日に一部区画の販売を開始した。Woven Cityの最寄り駅となるJR岩波駅では2017年度からエレベーター設置などのバリアフリー化、混雑緩和対策となる上りホームと跨線橋の新設工事を実施しており、2021年3月までにすべての工事が完了する。

仮想空間上に「デジタル裾野」を構築

 高村市長によると、裾野市は2018年8月に市長を本部長とする「裾野市データ利活用推進本部」を設置するなど、Woven City構想の発表以前からデータの利活用に積極的に取り組んできたという。2018年11月には全国初となる「データ利活用推進シティ宣言」を出し、IT技術を活用して地域課題の解決を目指す非営利団体「Code for Japan」との連携協定を締結。2019年7月には、東京大学生産技術研究所とも連携協定を締結し、「デジタル裾野研究会」を発足させている。

 デジタル裾野研究会では、裾野市を仮想空間に再現する「デジタル裾野」を構築している。デジタル裾野は、3Dの地図情報に、道路、橋梁、バス停、建物などのインフラ情報、人流などのデータを搭載したもので、現実空間を仮想空間に再現する「デジタルツイン」の構築・活用に向けた試みである。「現実空間を仮想空間にそのまま再現できれば、そこで仮説の政策を走らせて影響をシミュレーションできるようになる」(高村市長)。

デジタル裾野の画面(出所:シンポジウムでの高村市長のプレゼン資料)
デジタル裾野の画面(出所:シンポジウムでの高村市長のプレゼン資料)
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SDCCコンソーシアムには73事業者が参加

 SDCC構想のコンセプトは、「富士山麓の豊かな自然環境のもと、クリエイティブマインドを持った市民・企業等がデジタル技術やデータの利活用により、あらゆる分野の地域課題を解決する次世代型近未来都市を目指す」。裾野市ではその実現に向け、下図に示した9つの方向で取り組みを進めている。このうち1の「Woven City周辺等の整備及び地域との融合」はWoven Cityがある裾野市固有の課題となるが、2の「高付加価値の産業育成・雇用の確保」から9の「スマート自治体の推進」までは、多くの市町村にも共通する課題を網羅したものとなっている。

SDCC構想のコンセプト(出所:シンポジウムでの高村市長のプレゼン資料)
SDCC構想のコンセプト(出所:シンポジウムでの高村市長のプレゼン資料)
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SDCC構想の9つの取り組みの方向性(出所:シンポジウムでの高村市長のプレゼン資料)
SDCC構想の9つの取り組みの方向性(出所:シンポジウムでの高村市長のプレゼン資料)
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 SDCC構想の計画期間は、2021年度にスタートする裾野市の第5次総合計画から2035年度に終了する都市計画マスタープラン立地適正化計画まで、およそ15年を予定する。実施主体となる産官学のSDCCコンソーシアムは2020年7月に発足しており、2021年2月現在のメンバー数は73事業者、さらにアドバイザーとしてトヨタ自動車、東京大学生産技術研究所、Code for Japan、不二綜合法律事務所が参加する(SDCCコンソーシアム会員一覧:PDF)。「コンソーシアムのメンバーからは、すでに200以上のアイデアをいただいている。今後はそうした複数のアイデアをマッチングさせて、実証実験や社会実装につなげていく」(高村市長)。

SDCC構想の計画期間(出所:シンポジウムでの高村市長のプレゼン資料)
SDCC構想の計画期間(出所:シンポジウムでの高村市長のプレゼン資料)
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SDCC構想の推進体制(出所:シンポジウムでの高村市長のプレゼン資料)
SDCC構想の推進体制(出所:シンポジウムでの高村市長のプレゼン資料)
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SDCC構想の具現化に向けた個別プロジェクトも進行中

 後半は、裾野市で現在進行中のSDCC構想の具現化プロジェクトについての報告があった。「すそのんプレミアム付き商品券」「すそのんエール飯による飲食店応援プロジェクト」「キャッシュレス推進への取り組み」「My City Reportを活用した道路損傷状況データ収集」「耕作放棄地自動判定アプリ『ACTABA』を利用した裾野市耕作放棄地自動判定実証実験」などである。

  すそのんプレミアム付き商品券は、新型コロナ感染症で打撃を受けた地域経済の活性化や市民生活支援のために、裾野市が発行しているもの。「すそのん」とは、裾野市のご当地マスコットキャラクターのこと。

 この商品券の販売所や使えるお店を検索するサイトは、Googleのスプレッドシートに登録した設定情報からPWA(Progressive Web Application)アプリを生成する無料のオンラインサービス「Glide」を使用している。すそのんエール飯は、テイクアウト・デリバリー対応の飲食店とその提供内容を検索できるWebサービスだが、こちらも開発にGlideを使用しているという。

すそのんプレミアム付き商品券の取扱所・販売所の検索画面(出所:シンポジウムでの高村市長のプレゼン資料)
すそのんプレミアム付き商品券の取扱所・販売所の検索画面(出所:シンポジウムでの高村市長のプレゼン資料)
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 高村市長は最後、SDCC構想の目標について「目指すのは、誰もがうれしい、市民、企業、行政がWin-Winになれる都市。自然あふれる田園と未来都市が調和する田園未来都市」と総括し、報告を締めくくった。

(タイトル部のImage:出所はシンポジウムでの高村市長のプレゼン資料)


出典:「新・公民連携最前線」2021年3月10日付の記事より