利用者の急変を感じ取って通報

 ソワンはあくまで「駆けつけ介護ロボット」だ。プライベートを監視することはなく、急変や異変の場合だけに対応する。

 「利用者さんには脈拍を計測するデバイスを手首に装着していただきます。脈拍の変化でその方の体調を見守り、急変があればソワンが駆けつけます」(高山氏)

 ソワンの額に取り付けられているカメラを通して、遠隔であっても利用者の様子はタブレットなどで確認できる。もちろん、ソワンを通してスタッフと利用者が会話することも可能だ。

 「介護施設の夜勤帯はスタッフの数も少なくなります。限られた人員で、定時の見回りと都度都度のナースコールに対応します。でもナースコールが鳴っても、実際に居室に行ってみたら『間違えた』とか『ただ押しただけ』というケースがかなりあります。こうした訪室が全て無駄とは言いませんが、スタッフの負担になっていることは確かです」(高山氏)

 ソワンと手分けできれば、スタッフはより重要な業務により多くの時間を割くことができる。

 ソワン本体に加え、脈拍測定のデバイス(10セット)を含めたシステム、ソワンが居室に入るための自動引戸開閉装置(10台)、機器のメンテナンス料金など、一式をまとめてのリースで、料金は月額6万6000円だ。またオプションとして顔認証機能によってソワンに利用者やスタッフの識別情報を登録することもできる。

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 取材中、試しに筆者も登録してみた。見回りのデモンストレーションで、冒頭のように、「スエナミサマ……」とソワンに呼びかけられたのはそうした機能が搭載されているからだ。他にも施設内で転倒している人を見つけたときに通報する機能などもオプションとして追加できる。

 「定められたコースを、障害物を検知しながら、静かに見回る『自動巡回』はソワンの基本機能です。異変をキャッチすれば居室の中に入って確認することもできるし、廊下などで転倒者を発見すれば、スタッフに通報することもできます」(高山氏)

 介護現場で起こる虐待事件などは、スタッフのストレスが原因となっているケースが多いと言われる。

 「ソワンと仕事をシェアすることで、スタッフのストレスを低減することができます。そして将来的にはこうしたロボットが人員配置要件の一員となるよう、働きかけていきたいと考えています」(高山氏)

 つまり高山氏は「ロボットをスタッフのひとりとしてカウントする」という未来を展望しているわけだ。介護現場の人手不足は待った無しの状態だ。ロボットスタッフが人員要件として認められる未来は案外すぐそこまで来ているのかもしれない。

 ここからは、ソワンの開発現場に潜入する。