デバイスの小型化が追い風に

 実装化への扉が開いたのは2016年。米フェイスブック社によるオキュラス社の買収がターニングポイントになった。オキュラス社はVRのハード&ソフトウエア製品に特化した開発・販売会社で、現在はフェイスブック社の一業務部門になっている。

 フェイスブック社CEOのマーク・ザッカーバーグ氏がVRの将来性を高く買い、巨額の投資を行った。ハードウエアを安く流通させ、ソフトウエアで利益を上げる戦略で、オキュラスのヘッドセット(oculus go)はシェアを拡大し、ソフト開発・販売に多くの会社が参入した。silvereyeもその一社だ。

 「装置のパフォーマンスも上がり、大容量の情報を処理できるようになって小型化が実現した。リハビリ領域でも、それまでの研究を足がかりに、やっと実用的なデバイスを世に出せるようになったのです」(汲田社長)。それが2018年のことである。

RehaVRの商品構成。ヘッドセット(oculus go)と、ペダルに装着するコントローラー。「一般に流通している機材を利用しているので低コスト化が実現し、導入金額を安く抑えられている」(汲田社長)(写真:大久保 惠造、以下同)

 デバイス開発のハードルは下がった。そのため、仮想空間を歩くだけならアミューズメント施設でも導入できるようになった。だが、同社が目指すのは医療の分野だ。

 問題はソフトだった。先行研究があるとはいえ、どんなコンテンツがリハビリに適しているのか、時間は何分が望ましいのか、有効な対象者像は…など、一から設計する必要があったのだ。

 そこで今泉教授は知己の病院にヒアリングし、医療現場のニーズをさぐったところ、「病院でのリハビリは診療報酬体系に則って時間に上限があり、現状、その時間数だけでは日常生活に戻れるか不安な患者さんも少なくない。そのため、治療としてではなく、自主トレのような形で入院中に使えるものがあれば使ってみたい、といったアドバイスをいただいた」(今泉教授)

 医療スタッフもマンツーマンでつくだけの人的余裕がないため、一人で複数の患者を見られると使いやすい、というリクエストもあった。当初、今泉教授は先行研究で主に使われていたトレッドミル(移動ベルトの上を歩くトレーニングマシン)との連動を考えていたが、立位では安全確保のためにリハビリ現場ではマンツーマンが原則。そこで、より安全性の高い、座位でペダルをこぐマシンと連動させることにした。

 機能面も、当初は歩行などの運動機能の改善を念頭に置いていたが、まずは楽しんで運動できること、それによるモチベーションアップを目的としたものに絞り込んだ。

動画を再生すると、写真のモニター画面と同じ映像が利用者のヘッドセットにも上映され、ペダルをこぐスピードに合わせ、風景が進んでゆく。ペダルと動画を連動させる技術は特許出願中

 「試作機は、動画と動作が連動しておらず、ただ動画を眺めながらペダルをこぐもので、まったく面白くなかった。そこでペダルの回転と動画の速さを対応させてはとsilvereyeに提案し、同社でアルゴリズムを開発、搭載したのです」(今泉教授)。ゆっくりこげば映像もゆっくり、速くこげば速く進む。これが同社の製品の独自性であり、現行品の基本仕様になっている。