「いちどハマると抜け出せない」「自力での回復は難しい」という先入観で語られがちな「ギャンブル依存」「ゲーム依存」。しかし、世界保健機関(WHO)の国際疾病分類でも、重度の精神疾患レベルとそうではない「危険なギャンブルの遊び方」「危険なゲームの遊び方」レベルを分けて定義するという見直しがされるなど、その実態が新たに解明されつつある。20年にわたりギャンブル障害について研究を行ってきた公立諏訪東京理科大学教授の篠原菊紀氏は、「“キャンブル障害 “の解決が難しいのは、キャンブル=依存症とステレオタイプに捉える世間の誤解が大きい。実態を正しく知ることが不可欠だ」と話す。ギャンブル障害の本質から機序、対策まで、篠原氏に最新の知見について聞いた。

公立諏訪東京理科大学工学部情報応用工学科の篠原菊紀教授
公立諏訪東京理科大学工学部情報応用工学科の篠原菊紀教授
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WHOにより定義の見直しがなされた「ギャンブル障害」

 「ギャンブル依存」「ゲーム依存」という言葉から、あなたはどんな想像をするだろうか。進行性でどんどん悪化していく、一度陥ると回復しないといった偏見は、ギャンブルやゲームにハマりつつある当事者やその家族を苦しめているかもしれない。

 ギャンブル依存、ゲーム依存の医学的な呼び方は、ギャンブル障害(Gambling Disorder)、ゲーム障害(Gaming Disorder)。ギャンブルやゲームの“仕方”により、さまざまな弊害が起きることを言う。

 2022年2月に世界保健機関(WHO)による国際疾病分類第11版(ICD-11)において、ギャンブリング障害に関する記述の変更が行われ、日本精神神経学会でも告知された。

 具体的には、ギャンブル障害であると診断するには、

  • □ギャンブルする時間や頻度を自分でコントロールできない
  • □日常生活でギャンブルを他の何よりも優先させる
  • □否定的な結果(ギャンブリング行動による夫婦間の対立、多額の金銭的損失、健康への悪影響など)が生じていてもギャンブルを続け、増大させていく

 の3症状全てが当てはまり、かつ、

□その行動によって個人、家族、社会、教育、職業などに重大な苦痛や障害が生じている

 ことが必須となり、「危険なギャンブルの遊び方」と区別された[1]。

 ちなみにICD-11では、ギャンブルと同じく行動嗜癖である「ゲーミング障害」についてもギャンブリング障害と全く同様の定義の厳密化が行われている。

 まず、“言葉”について整理しよう。メディアでは、ギャンブル障害において、「アルコール依存症」と同様に「ギャンブル依存症」という言葉が用いられることが多い。しかし、アルコールや薬物といった「物質」への依存と、ギャンブルという「行動」による障害は、脳で起こるメカニズムが異なることが研究によって分かっている。

 「これまで我が国では、ギャンブルに伴う問題を“依存”とひとくくりにする傾向がありました。しかし、ICD-11の定義見直しにより、“病気や障害”に分類される対象者は、かなり少数に絞り込まれます。ギャンブル障害に当てはまる人たちには治療・介入が必要である一方、これまで依存として同じように扱われていた“病気や障害には当てはまらない軽度レベル”の人には、医療や介入というより個々のレベルに応じたリスク対策が行われるべきです」と、ギャンブルを脳科学という視点で研究してきた公立諏訪東京理科大学工学部情報応用工学科教授の篠原菊紀氏は言う。

 篠原氏自身、約20年前に研究を始めたときと現在では、ギャンブル障害に対する認識が大きく変化したのだという。