東京都から外出自粛要請が発信された2020年3月27日、SNS上で「COVIDVENTILATOR(コーヴィッドベンチレーター)」という名のプロジェクトが動き出した。3Dプリンターを活用した人工呼吸器の実用化に向けた実証実験だ。Facebookのプロジェクトページには400人以上が集結し、各事業所や各家庭で作られた樹脂製のパーツ写真が続々とアップされた。

 このプロジェクトで作るのは人工呼吸器の心臓部とも言うべき「人工呼吸器弁」だ。弁を構成するのは4つの部品(ボディ、弁、螺旋バネ、圧力調節ねじ)で、ABS樹脂と熱溶解積層型3Dプリンター、インターネット環境があれば製造できる。

3Dプリンターで出力する人工呼吸器弁の4つの部品。左からボディ、弁台座と弁、螺旋バネ、圧力調節ねじ(写真提供:新潟病院 石北氏、以下同)

 一般に、人工呼吸器は呼吸不全となった患者に対して使用し、外側から胸郭の拡張を促す胸郭外陰圧式と、気道から空気を送って肺を膨らませる気道内陽圧式に大別できる。テレビドラマなどで、風船状のバッグがついた手動式人工呼吸器を見たことがある方は多いのではないだろうか。それは後者の陽圧式だ。

そのほかの部材(人工鼻、マノメーター)に人工呼吸器弁を接続した状態

 今回の人工呼吸器弁は陽圧式の手動式人工呼吸器を代替するもの。3Dプリンターで製造する4つの部品に、気管内挿管チューブや閉鎖式喀痰吸引カテーテル、ガスサンプリングポート付き回路用人工鼻フィルター、バッグバルブマスク、エアコンプレッサなどを組み合わせて使う。4つの部品以外の器具はいずれも既存品で良く、電源がない場所ではエアコンプレッサの代わりに、足で踏んで空気を送るフットポンプも使用できる。